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イラク:戦争の被害者への外科治療

2007年10月10日掲載

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イラクにおける紛争は今日、世界最悪の人道危機へと発展し、連日一般市民に死者・負傷者が出ている。イラクの医療制度はもはや、暴力の犠牲者らに適切なケアを提供することができない。数千人の医師が国外に脱出しており、イラクに残った医師も、嫌がらせを受け、逮捕され、あるいは拉致、暗殺の脅威にさらされている。紛争の中で人道援助従事者も標的となっているため、ほとんどの国際援助団体はイラクから撤退している。一方、国境なき医師団(MSF)はイラク各地で人びとに医療援助を提供しているほか、ヨルダンなどの隣国から活動を展開している。また比較的治安がよいイラク北部の病院では、紛争地帯の患者に外科治療と心理的支援を提供するプログラムを立ち上げた。

以下は、イラクにおけるMSFの活動責任者ボルカーへのインタビューである。 なお安全上の配慮から、イラクで活動するMSFスタッフのフルネームは公表しない。

Q. イラクの医療制度の中で、MSFはどのような支援を提供できるのでしょうか。
A. MSFは、医療物資の提供と現地医療従事者への研修を通じて、イラク全土の病院と医療施設を支援しています。医療制度の崩壊、医薬品・医療物資の慢性的な不足により、当地の病院では患者に適切な治療が施せないこともしばしばです。MSFは、十分な物資を供給することで紛争地帯の病院を支援し、犠牲者の人命救助を支援しています。献身的な人びとで作る強いネットワークのおかげで、物資が確実に病院へ届いています。やはりこのネットワークのおかげで、紛争の被害を受けている地域の人道的状況の調査もできています。また、MSFにはイラク北部のクルド地域の搬送病院に専門家を派遣する独自の手段もあり、病院において現地の医師らに、特に外科分野での特別な医療研修を行うことが可能になっています。
Q. MSFは2004年、治安が悪化したためにイラクから撤退しました。再度イラク入りを決定したのはなぜですか?
A. イラクは紛争の影響を深刻に受けている国です。主に宗派間の抗争と一般市民を標的とする暴動のため、各地で極めて凄惨なテロ事件が頻発しています。多数の死傷者が出ているほか、住民の大規模な避難が生じており、一般市民が置かれている人道的状況は非常に深刻です。住民の避難は、イラク北部の比較的治安状態がよいクルド地域でも発生しています。多くの医師や医療関係者が国を後にする中で、紛争で負傷した多数の患者の足元から医療インフラが崩れつつあります。国民が十分な医療を受けることがますます難しくなりつつあるのです。MSFは2004年以降、紛争の展開と人道的状況の悪化を注視してきました。治安状況の非常に悪いなか、追い詰められたイラク国民に援助の手を差し伸べる方法を絶えず模索してきたのです。2006年末、私たちは比較的安全なクルド地域でプログラムを始める決定をしました。この決定は、南へわずか100kmの地点から始まる紛争地帯で身動きのできない状況に置かれた人びとへの治療の提供に道を開くものでした。人びとが私たちの活動する地域に足を運べるようにするには、どうしたらいいかということが課題でした。
Q. 紛争地域の患者らが、MSFが活動する比較的安全な地域に入るには、どうすればよいのですか?
A. 実はそれが、イラク北部で活動するMSFにとって、最も困難な点の一つなのです。紛争地帯の内部にいる負傷者のもとにMSFのスタッフが足を運ぶことは、治安上の理由で不可能です。ですから、これらの負傷者がMSFの活動する病院まで来られるようにする必要があります。MSFはクルド地域のいくつかの搬送病院を、医療物資の提供や、国際的な医療専門家チームによる研修の実施を通じて支援しています。現在、紛争の被害の甚大な地域の患者をこれら搬送病院に受け入れるため、移送制度の確立に向けて取り組みを進めているところです。そのために、また紛争地帯の病院を支援するために、私たちは両地域の主要な関係者を結ぶ優れたネットワークを作ろうと努力しているところです。このネットワークは、患者を治安状態の比較的よい地域の病院に安全に移送する上で不可欠である一方、紛争地帯の病院に確実に医療物資を届けることを可能にします。しかし極めて大きな危険をはらんだ任務でもあります。イラクでは、医療ケアなど基本的なサービスの提供に従事するという行為が既に、その者の生命を危険にさらす行為だからです。これもまた、MSFが直面するジレンマと言えます。
Q. 最も多く見られる傷病はどのようなものですか?
A. 主に一般市民を狙って自動車や道端に爆弾を仕掛けたり、武装グループが一般市民を狙撃するなど、テロ事件が後を絶ちません。そのため、極めて複雑で重大な傷を負った患者が運ばれてきます。紛争地帯にある病院の多くは、こうした負傷者に質の高い治療を施す能力がありません。医療インフラの崩壊により、医薬品、外科器具、包帯などが不足しています。クルド地域の搬送病院にやってくる患者の多くは、紛争地帯の病院で一度は治療を受けていますが、それはまったく不十分なものです。最も多く見られる傷病の一つに、爆発によるやけどがありますが、自爆未遂によるやけども珍しくありません。やけどしている患者の状態はたいてい極めて重篤です。体表面積の半分を超えるやけどもよくあります。クルド地域の2つの病院では熱傷ユニットが大変よく機能しています。どちらもMSFが海外の専門家による監督の下、医師・看護師の訓練、物資の提供、整形手術を通じて支援してきました。その一つでは、心理社会的支援、精神医学的支援も提供しています。
MSFはイラク国民に医療ケアを提供するために全力を尽くすことを決意し、2006年以降さまざまなプログラムを実施してきた。イラク中部と北部にある 12の病院に向けて、医薬品と医療器具などの物資を提供している。また中部と北部の8つの病院では、医療スタッフと心理カウンセラーのための研修を実施している。さらに北部の3つの病院では外科チームを結成し、直接手術を行うプログラムを開始している。一方ヨルダンでは、紛争で負傷したイラク人に顎顔面の手術と再建外科手術を実施する外科プログラムを展開している。またヨルダンを拠点に、イラク国内の複数の病院に医薬品と医療物資を提供し、イラク人医療スタッフに指導を行うプログラムも立ち上げた。

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