食糧援助増加策では栄養失調児は救えない −求められる新たな栄養治療の手法の導入−
2007年10月11日掲載
世界では、年間5百万人の5才未満児が栄養失調に関連して命を落としている。国境なき医師団(MSF)は、このような死を減らすため、栄養価が高くそのまま食べられる栄養食品(RUF)のさらなる活用を呼びかけている。栄養失調の治療ではなく飢餓への対応に焦点を当てた現行の食糧援助では、最も死の危険性が高い幼児のニーズに対応していないことを、MSFは警告する。
MSFインターナショナル会長のクリストフ・フルニエ医師は語る。「子どもが摂取する食糧の量だけでなく、食糧に何が含まれているかが問題なのです。幼児が摂取する食糧に適切な量のビタミンや必須栄養素が含まれていなければ、彼らは通常では簡単に撃退できる病気にかかりやすくなります。食糧援助を増加する呼びかけは、最も死の危険にさらされている幼児特有のニーズを見落としているのです。」
RUFは個別包装されており、幼児に必要な栄養素、ビタミン、ミネラルがすべて含まれている。この食品は、粉ミルク、砂糖、植物性脂肪を用いた栄養価の高い治療食であり、現地で製造・貯蔵が可能で、高温下でも容易に運搬できる。RUFを摂取すれば子どもは栄養失調から回復し、止まっていた成長も再開する。医師や看護師ではなく、主に子どものケアをする母親がRUFをそのまま与えることができるため、死の危険性が高いより多くの子どもに行き渡るようになる。
MSFのソマリアにおける活動責任者、グスタヴォ・フェルナンデス医師は語る。「ソマリアでは急性栄養失調児にRUFを与えていますが、数週間で子どもたちの体重が増え、発育を始めています。ソマリアのように治安が極度に悪化している地域では、RUFは実用的です。一般食糧配給も必要ですが、3才未満の子どもに対しては大きな効果は得られないと思われます。」
幼児期における重度の急性栄養失調は、世界で「栄養失調に脅かされている地域」と称されるアフリカの角(アフリカ大陸東端部)、サヘル地域(サハラ砂漠南緑)、南アジアの3地域で広範にわたり頻繁に見られる。世界保健機関(WHO)は、世界中で常時2千万人の幼児が重度の急性栄養失調に陥っていると推定しているが、MSFの推定では、2007年にRUFの供給を受けられるのはそのうちわずか3%でしかない。
WHO、世界食糧計画(WFP)、そして国連児童基金(UNICEF)がガイドラインで現在推奨している「栄養治療食としてRUFを重度の栄養失調児にのみ与える」という指針は、あまりに限定的過ぎる。栄養面での利点を考えると、RUFは初期段階の栄養失調に対処できる見込みがあり、通常配給される栄養を強化したトウモロコシと大豆の粉(CSB)と比べてはるかに効果的である。MSFは子どもが急性栄養失調に陥るのを防ぐため、改良したRUFを補助食品として用いる試験的なプログラムを実施している。
ニジェールのマラディ県におけるMSFの医療コーディネーター、スーザン・シェパード医師は語る。「子どもが次第に重症になるまで待つよりも、早期に行動することを決めました。私たちは、危機に瀕した地域の全ての3才未満児にRUFを与える試験的なプログラムを実施しています。これにより、子どもたちは通常の食事に欠けている栄養素を摂取することができるようになります。」
ニジェールにおけるこの初期治療、あるいは予防策において、MSFは通常の食事の栄養補助食品として、RUFの入った小さな容器を母親に配布している。この進行中のプログラムでは6万2千人以上の子どもが対象となっており、初期結果によると、幼児の母親にCSBと食用油を配給する従来の手法に比べて、RUFは極めて効果的であることを示している。
MSFは資金拠出機関と国連の各機関に対し、RUFの導入と活用の拡大を早急に促すよう要求している。実施に際しては、最も弱い立場にいる子どもに配布するためのコスト、7億5千万ユーロ(約1234億円)をカバーするために、資金を新たに割り当てる必要がある。しかし同時に、栄養失調児の治療に必要な栄養素を含む既存の製品、そして新たに開発された製品を用いた食糧援助計画の見直しも必要となる。
MSFは初めてRUFが販売されて以来、この栄養治療食を用いて栄養失調の治療を行っている。2006年には、22ヵ国で15万人以上の急性栄養失調児の治療を行った。
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