リベリア:小児結核治療の新たなアプローチ−看護師へのインタビュー−
2006年04月21日掲載
国境なき医師団(MSF)の看護師ガブリエラ・アダオは、リベリアのモンロビアにあるアイランド病院で活動を行っている。アダオがMSFの活動に加わるのはこれが4度目である。アダオは病院で結核患者が薬を正しく服用し、最終的には回復するよう、患者自身が治療に参加できるような新しいアプローチを開発しており、仕事のほとんどを、1人ないしは2人以上の子どもの治療を担っている両親や介護者のためのカウンセリング・サービスの改良に充てている。アダオにMSFが開発している新しいアプローチについて尋ねた。
- Q「アドヒアランス(患者自身の能動的参加による服薬遵守)」とは何を意味するのですか?なぜそれが結核治療にとって重要なのでしょうか?
- A.「アドヒアランス」とは、患者が特定の薬剤の服用法に厳格に従うことです。患者は治療期間全体を通じて薬を正しい時間に服用し続けなければなりません。結核の場合、服用法を正確に守らないと治療の効果が得られず、薬剤耐性の発生につながります。死に至ることもあります。結核に対して行える治療の種類は限られているため、この問題には極めて慎重に対処しなければなりません。さらに難題となるのは、非常につらい治療を6~8ヵ月間も続けなければなららいという点です。
- Q.患者が治療上の指示を守れるようにするために、主にどのような手段を用いていますか?また、MSFが活動する状況の中でそれらの手段を適用するのは、?
- A. 世界保健機関(WHO)は、直接監視下短期療法(DOTS)を推奨しています。これは、医療従事者や一定の訓練を受けた家族、あるいは地域住民の監督の下で毎日の服薬を続けるというものです。しかしMSFが活動を行う多くの状況下では、患者が適切な医療機関に毎日通院するのは極めて困難です。紛争、道路網の不良、あるいは単純に医療システムの破綻などのためです。ですから現実には、日々監督を行うことはいまだ実現しない理想にとどまっており、MSFはさまざまな困難な状況下で患者自身が治療の主役となり、自ら服薬を行えるような仕組みを作っています。
- Q. リベリアの首都でのプログラムでは、何が子どもたちに治療上の指示を守らせる上での障害となりましたか?
- A. まず、小児患者の場合、母親など介護者に適切な投薬を行う責任があるという点を忘れないことが重要です。アイランド病院においては、親が交通費を支払えないために定期的に通院できないことが、治療継続上の最大の問題になっていました。また、結核には依然大きな汚名がつきまとい、多くの親は子どもが結核に感染したことを認めようとしません。そのため、治療について介護者と話し合うことも困難なのです。また親や介護者自身が病気を抱えていることもあり、その場合は子どもの治療を世話することも難しくなります。そして、大半の母親には複数の子どもがおり、定期的に診療所に通うために時間と労力を費やすためには、その間に他の子どもの面倒をみてもらう方法を探さなければならないのです。
- Q. アイランド病院では、どのようにして結核の子どもたちの服薬遵守を向上させたのですか?
- A. 私たちの戦略の中軸は、介護者が治療過程全体をきちんと把握するようにして、彼らを治療の主役にすることにあります。治療開始前から治療過程全体を通じて、介護者に情報を提供し教育を行うことによってこれを達成しています。私たちは、介護者に責任を与えることが、医療従事者による継続的な監督なしに治療を完遂させる唯一の方法であると信じています。アイランド病院の医療スタッフは監督役は担わず、定期的なカウンセリングを通じて、治療を進める上での最善策が何であるかを介護者が見極める手助けをしています。
- Q. 実際にはカウンセリングはどのように役立っていますか?
- A. 治療を開始する前、場合によっては子どもが結核に罹患していることがはっきりする前に、初回のカウンセリングを介護者との間で行います。最初に必要なのは、結核とは何であり、どのようにして子どもに感染したかを説明することです。カウンセラーは同時に、子どもの両親が結核をどのように捉え、理解しているかを知ろうと常に心がけます。この話し合いを通じて、小児患者が治療期間全体を通じて毎日きちんと服薬できるようにするのに最も適した方法を見出していきます。それから、小児患者は介護者と共に2週間病院で過ごします。介護者は初回服薬時に同席し、さらに治療薬の投与方法についての教育を受けます。続く2ヵ月間は「集中段階」です。この期間中、母親は治療薬を受け取りに定期的に通院する必要があります。母親が来院する度にカウンセラーが面談し、母親が直面している問題や、状況を改善する方法を考えます。
- この初期集中段階から残りの治療期間にかけて対面カウンセリングを行うことによって、母親らは社会的、経済的、家庭的問題など、日々の生活で直面する多数の問題について話すことができるようになります。私たちの役目は、社会的問題を解決することでも金銭を与えることでもありません。母親や他の介護者と共に座って話し合い、これらの問題のために治療法が十分に守れなくなる恐れがあるということを理解する点に意義があるのです。それから、どのようにすれば母親が状況に対処できるかを一緒に考えるように努めます。
- Q.このカウンセリング手法はどのくらい効果をあげていますか?
- A. カウンセリングの成果には大変驚いています。人びとは多くの社会的問題や経済的問題を抱えていますが、この手法は非常に受け入れられやすく、介護者たちは患者への正しい投薬を続けています。
- 最も前向きな点は、介護者とカウンセラーとの間に信頼関係が育まれることです。両親、特に母親にとっては、日常生活や子どもの治療に関して直面しているしがらみについて話ができるということは極めて重要です。この「支持的コミュニケーション」が私たちの戦略の核であり、カウンセラーは小児治療を遵守するための最善策を見出せるよう介護者を助けることができるのです。
- もう1つ重要な点を挙げると、母親など介護者は子どもの健康状態が改善していることに一旦気付くと治療がうまくいっていると分かります。そしてカウンセリングで良い手ごたえを得ると、同じように治療を続けようという希望を持つのです。
- Q. アイランド病院では現在、何人の小児患者が結核治療を受けていますか?そして、将来の見通しはどのようなものでしょうか?
- A. 2006年3月初旬の時点で、約100人が治療を受けています。現在では治療プログラムが確立されたため、毎月20~25人の子どもを新たに受け入れていきたいと考えています。スクリーニングの質を向上させ、専門医への紹介システムを強化し、リベリア人スタッフへの結核トレーニングを増やした成果で、今後受け入れる子どもの数が増えていくと予想しています。
- アイランド病院は、首都モンロビアの地域全体から、結核の疑いのある小児が紹介されてくる病院になるだろうと考えています。多くの発展途上国と同様にリベリアでは、国家的な結核対策の焦点は成人患者に当てられています。結核感染の大半は成人を介して起こるためです。小児患者のための結核対策がないため、アイランド病院で行われているようなプログラムは極めて重要です。国家的な対策の対象からはずれた人びとをも対象としているからです。
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