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2005年、10の最も語られなかった人道的危機

2006年02月掲載

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「国境なき医師団(MSF)は、2005年を通じて世界で最も注目を浴びず、報道されることの少なかった人道的危機の10のリストをここに発表します。メディアの関心の外側で、出口の見えない危機にとらわれ続ける人びとの窮状を訴えます。

  1. コンゴ民主共和国:戦闘と病気に痛めつけられた人びと
  2. チェチェン共和国:恐怖を生きる人びとの膨大な援助ニーズとささやかな援助
  3. ハイチ:暴力に見舞われた首都
  4. HIV/エイズ:貧困地域に適応した診断・治療法の研究開発の欠如
  5. インド北東部:住民に多大な犠牲を強いる戦闘が続く
  6. スーダン:内戦の正式終結後も南部で求められる緊急援助
  7. ソマリア:引き続く紛争と困窮に耐える人びと
  8. コロンビア:暴力と恐怖に囚われて
  9. ウガンダ:北部で悲惨な状況が政情不安のためさらに悪化
  10. コートジボワール:深まる危機

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コンゴ民主共和国:戦闘と病気に痛めつけられた人びと

コンゴ民主共和国(DRC)何百万人もの人びとが極度の貧困と暴力を耐え忍んでいることは、世界にほとんど知られていない。同国南部カタンガ州では 2005年11月中旬以降、政府軍(FARDC)とマイマイ民兵組織間の戦闘により、何千人もの人びとが避難を強いられてきた。 12月初旬におきた武装グループによる避難民キャンプの襲撃でも、約3,000人が生き延びるために再び避難しなければならかった。

コンゴの人びとはこれまでもこうした激しい暴力に耐えてきた。もともと不十分であった公共医療制度は10年以上にわたる戦闘と破壊行為で崩壊し、悲惨な状況は国全体に広がっている。イトゥリ地方北東部、北キブ州、南キブ州は、昨年ふたたび資源支配をめぐって複数の勢力が抗争を繰り広げる暴力の舞台となった。多くの人びとが犠牲となり、女性に対しては恐るべき性的暴力が振るわれた。

1月から5月にかけて、MSFは危険から逃れるため家を後にしたイトゥリ地方の人びと約 8万人に対し援助を行った。 MSFはコンゴでの緊急援助プログラムに MSF で最大数の援助スタッフを充てて活動している。最近実施した調査では、国内のいくつかの地域で幼児死亡率と重度栄養失調率が驚異的に高いことがわかった。暴力の蔓延したルブツでは、緊急事態と定義される水準の6倍、また比較的落ち着いているイノンゴの町でも5倍に達した。

またこの調査では、戦闘や暴力が発生していない地域においてさえ、ほとんどの人びとは料金が支払えないなどの理由で、治療を受けるどころか医療施設に行って診察を受けることも出来ず、マラリア、 HIV/エイズ、コレラなどの病気で非常に多くの命が奪われていることも明らかになった。内戦は2003年に正式に終結しているものの、平和維持活動や政治的な努力も、国民の大半の生活状況を改善するには至っていない。

チェチェン共和国:恐怖を生きる人びとの膨大な援助ニーズとささやかな援助

ロシア連邦軍とチェチェン武装勢力に締め付けられ、トラウマを負った住民たちは、安全な避難場所がないことに絶望しながら、長期化する紛争の災禍にいまも耐え続けている。何千という避難民がイングーシ共和国のキャンプからチェチェンへと追い戻され、心ならずも荒廃した祖国へと帰還したが、一度は逃れたはずの恐怖、暴力、そして増大する孤立感を再び味わっている。

チェチェンの状況は「正常化」したと当局は主張するが、反政府容疑者を一斉に検挙するいわゆる掃討作戦、地雷事故、行方不明者の続出、民兵による暴力は日常茶飯事だ。治安の悪さによって国際的な援助活動が制限される中、MSFはチェチェン内のいくつかの地方で、医療機関を支援し、外科プログラムを開始し、チェチェン人スタッフとともに援助活動を行う方法を見出すことができた。MSFが支援するグロズヌイ第9病院にはチェチェン最大の外科治療センターがあり、昨年は銃撃や地雷による負傷を含む暴力に起因する外傷の治療が数多く行われた。

多くの家は破壊されたままで、町々は依然として危険なため、人びとは帰還しても避難生活を続けている。一方イングーシに留まっている3万2千人近くの避難民の生活環境は困難な状態から耐え難い状態までさまざまだが、結核や肺炎などの疾病が蔓延し易い、過密で湿気の多い荒れ果てた住居に暮らす人が多い。「近頃では、最も治療が難しいのは人びとの絶対的な絶望感です。」とイングーシのMSF看護師は述べている。彼女自身もチェチェンからの避難民である。

地域全体の情勢が不安定化している一方で、国際的な援助は極端に少なく、チェチェン紛争は国際政治の議題から消え去っている。

ハイチ:暴力に見舞われた首都

2004年2月にジャン=ベルトラン・アリスティド大統領が亡命に追い込まれて以来、ハイチの首都ポルトープランスの多くの人びとは、繰り返し襲いくる広範な暴力に巻き込まれている。人びとは“カルチエ・ポピュレール(人民地区)”や海沿いのスラム街で戦闘を繰り広げるさまざまな武装グループらに、故意に、あるいは偶然に、銃撃され殺されている。政治的動機による暴力や犯罪的暴力が首都全体に広がっている。

MSFは2005年、首都に開設した外科治療センターで暴力に関連した負傷者2,250人以上を治療した。そのうち1,500人近くは銃弾による負傷者であった。治療を受けた人の半数は女性、子供、高齢者であり、市民が暴力の犠牲となっていることが顕著に現れている。MSFは7月、治安の悪化を憂慮して、武装グループに対し市民の安全を尊重し負傷者に緊急医療を受けさせるよう呼びかけた。しかしその翌日、センターには新たに27人が運び込まれた。首都で最も暴力が多発するシテ・ソレイユ地区で国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)が軍事行動を終日展開した際の銃撃で負傷したのである。その4分の3は女性と子供であった。シテ・ソレイユ地区では25万人の人びとが事実上医療から取り残され、絶望的な貧困の中で生活している。

MSFは8月、地区の中心にあるチョスカル病院とチャピ保健センターを再開した。3ヶ月間で1万2千件近くの診察を行い、緊急医療を必要とする800人以上の治療にあたった。MSFのハイチにおける活動責任者アリ・ベスナチは「ポルトープランスの多くの地区の住民は、明日を生き延びられるかどうかという状況に直面しています。かつてこれほどまでの暴力を経験したことはないと街の人びとが話すのを毎日のように耳にします。」と述べた。

HIV/エイズ:貧困地域に適応した診断・治療法の研究開発の欠如

HIV/エイズの全体像はよく知られている。世界で4,000万人以上がHIV/エイズにかかっており、毎日8,000人がエイズに関連した病気で死亡する。そのうち1,400人は子供である。この問題はしばしば報道でも取り上げられているが、しかしエイズ危機で最も影響を受ける患者、すなわち開発途上国の貧困の中で生活している人びとに合った治療方法を生み出すための研究開発が全くといっていいほど行われていないことには、ほとんど関心が払われていない。例えば幼児のHIV感染の診断には、非常に資源集約的な技術が必要とされるため、診断を受けて延命治療を始めることのできる例は非常に少なく、子どもの陽性患者の半数は2才以下で死亡している。

早期に診断されたとしても、成人向けのように簡単に服用できる幼児向け抗レトロウイルス(ARV)薬がない。エイズ渦の拡大を抑えるためには、エイズ患者の最大の死因である結核を診断するための検査法への思い切った投資が必要である。現在の喀痰検査は100年以上前に開発されたもので、結核とHIVの重複感染を診断することが出来ない。また、ARV治療がうまくいっているかどうかを確認し、いっていない場合にはより効果的な投薬計画に切り替えるための手法や、治療を切り替えた際、服用のたびに大量の錠剤に苦しめられることのない患者の立場に立った第二選択薬の組み合わせの開発も強く求められている。

HIV/エイズの新たな診断法や貧困地域の人びとの現実に対応した薬の研究開発が行われなければ、HIV/エイズの悲劇は恐ろしく壊滅的なものへとなっていくだろう。

インド北東部:住民に多大な犠牲を強いる戦闘が続く

インド北東部のアッサム州とマニプール州の住民は、政治的・宗教的・民族的な対立からくる暴力やインド政府と武装グループとの長期にわたる紛争の被害を受け続けてきた。アッサム州のカルビ・アンロング地方では2005年10月に起こった暴動と報復的殺戮で90人以上が虐殺された。

インド北東部で頻発する戦闘により、カルビ・アンロングと近隣のノース・カチャール地域では推定4万人の人びとが付近の丘陵地帯に安全な場所を求めて避難した。過去5年間に15万人以上がこのような暴力を逃れて家を後にした。避難民たちは食糧や住居や諸設備もないまま、政府が設置した過密なキャンプに集まる以外に為すすべがない場合が多い。キャンプへの補給は常に途絶えがちで、麻疹や下痢などの病気が何度も大流行してきた。

政治的な思惑のために、何千という人びとが8年以上もこうしたキャンプの過酷な状況の中に置かれている。ゴイラマリでは、絶望した避難民たちがハンガーストライキ決行を表明した。政府の無策、武装グループの恐怖、厳しい貧困により、現地の保健医療システムは崩壊している。

マラリアが猛威を振るっているが、ほとんどの人びとは効果的な治療を受けることができない。MSFは2006年、アッサム州だけで5万人のマラリア患者を治療することになるだろうと予想している。保健医療の厳しい状況は、マニプール州におけるHIV/エイズによる死者の増大や結核患者の増加にも現れている。これらの病気には治療法があるにもかかわらず、紛争に巻き込まれた住民の大半は必要な治療を受けられずにいる。

スーダン:内戦の正式終結後も南部で求められる緊急援助

2005年1月、スーダン政府と南部に拠点を置くスーダン人民開放軍(SPLA)が和平合意に調印したことにより、アフリカで最も長期に及んだ内戦は正式に終結した。しかしメディアの注目と同様、和平がもたらした希望も長くは続かなかった。和平から1年が過ぎた現在も、20年間続いた紛争で大きな被害を受けた人びとの過酷な生活状況は根本的に改善していない。

医療上の緊急事態が繰り返され、上ナイル州と西赤道州を中心に武力衝突が散発し、そして大勢の難民が医療をほとんど全く受けられない地域へと帰還している。多くの人が当面は人道援助に依存する他ないであろう。社会基盤がほとんど整備されていないため、基礎的な医療が受けられず、はしかなどワクチンで十分に予防可能な病気やマラリア・肺炎などの治療可能な感染症に苦しめられている。バハル・エル・ガザル州には機能している病院は数えるほどしかなく、多くの患者が同州のアクエム村にあるMSFが運営する医療施設まで数日かけて徒歩でやってくる。MSFはまた上ナイル州ではカラアザールの治療を、西赤道州ではアフリカ睡眠病の治療を行っている。600万人が食糧援助に依存している状況では、小さなきっかけで家族全員が重度の栄養失調に陥る。

2005年には干ばつのうえに、国内避難民および隣接国からの難民合わせて数万人が帰還したため、スーダン南部における慢性的な食糧不足がさらに悪化した。MSFは2005年を通じて上ナイル州、ジョングレイ州、バハル・エル・ガザル州で数千人の重度栄養失調児の治療をおこなった。だが、2006年にスーダン南部に帰還すると見られる多くの人びとを迎える準備はほとんどされていない。

帰還が、すでに生活資源が極めて限られ、社会基盤の破壊されているこの地域の人びとが直面している悲惨な状況を悪化させるのではないかと懸念される。

ソマリア:引き続く紛争と困窮に耐える人びと

1991年以来、ソマリアには正常に機能する中央政府がない。14年間続く紛争により公共医療制度が崩壊し、医療サービスは全く存在しなくなってしまった。国内のほとんどの診療所や病院が武装勢力に略奪され、あるいは深刻な損害をこうむった上に、国連の推定では人口10万人あたりわずか4人の医師と28人の看護師か助産師しかいないとみられる。人びとは数少ない医療センターに行くために約800キロメートルもの道のりを移動しなければならないこともある。

このような状況がもたらした結果は壊滅的なものである。栄養失調、極度の貧困、干ばつなどはソマリア人が直面する災難の一部でしかない。2005年には過去12年にこの国を襲った干ばつの中でも最悪のものの1つが起きており、今後6ヵ月間、南部では200万人近くが深刻な食糧不足に陥る危険がある。

国の医療サービスがなく国外からの援助が不可欠であるにも関わらず、暴力の蔓延やあまりにも複雑な部族構造のために、この国で活動しようとする援助組織は少ない。MSFはソマリアで1986年から活動を続けており、南部と中央部の最も内戦の被害が大きい地域で緊急援助を行っている。チームは基礎的医療の提供や外科手術を行い、結核やカラアザールの治療にあたり、重度の栄養失調の子どもたちには小児科診療と集中栄養治療を行っている。しかしこれらの援助も、必要とされている規模には到底いたらず、世界が忘れ果てたこの破滅的な災難の陰で多くの人命が失われ続けている。

コロンビア:暴力と恐怖に囚われて

40年間続く内戦に苦しむコロンビア人にとって、2005年も事態はほとんど改善しなかった。数十年にわたって、政府軍、民兵組織、武装ゲリラが麻薬売買と天然資源をめぐる争いを背景に戦闘を続けており、農村部および都市部に住む一般市民がテロの標的となっている。

コロンビアでは暴力が依然として死因の第1位を占め、避難を強いられた人の数はこれまでに300万人以上にのぼる。コロンビアにおける国内避難民の数は現在、スーダン、コンゴ民主共和国(DRC)に次いで世界第3位である。多くの人びとが、貧困、病気、暴力が横行する主要都市周辺のスラム街に紛れ込んで、安全と匿名性を確保しようとしている。

2005年前半だけでも6万2千人近くが新たに避難民となった。これは前年比で10%の増加である。その後コルドバ県および北サンタンデル県でも住民が攻撃を受けて避難し、MSFの医療チームが緊急援助を行った。敵対するすべての武装勢力が戦術の一環として一般市民を避難民化させている上に、コロンビア中に蔓延する処刑や誘拐などの暴力によって、人々は避難を繰り返し、不安のために心理的に衰弱している。避難民はコロンビア政府が提供する医療や社会福祉を受けることが出来るが、恐怖心からあるいは情報の欠如のために登録をしない人が多く、公的な支援を受けられずにいる。

MSFはカケタ県、チョコ県、コルドバ県、スクレ県、ボリバル県、ナリーニョ県、北サンタンデル県、トリマ県、クンディナマルカ県、ボゴタ特別区で不可欠な医療サービスを提供している。またさらに遠隔地域の人びとのもとへと移動診療にも赴いている。

ウガンダ:北部で悲惨な状況が政情不安のためさらに悪化

ウガンダ北部に住む人びとは20年近くの間、神の抵抗軍(LRA)による攻撃や政府による強制退去などの暴力的な衝突の被害を受けてきた。現在、北部の人口の80%近くにあたる160万人以上が、安全でもなければほとんど援助もない避難民キャンプに追い立てられている。暴力に起因する死者の数が増え続ける一方で、多くの人びとがマラリア、呼吸器感染、下痢などの予防可能な病気で命を落としている。

グル、リラ、パデール、キトグム、アパク、カタクウィなどの町にあるキャンプの避難民のほとんどは、慢性的な食糧と水不足が命を脅かすという悲惨な状況のなか、かろうじて生存している。多くの家族が戦争と避難のストレスを受けながらも生き残ろうともがいているが、貧困に加えHIV/エイズといった病気の蔓延もあり、社会そのものが崩壊の危険にさらされている。

2005年末にキトグムとパデールで起きた、一般市民や人道援助関係者への待ち伏せ攻撃により人びとの恐怖は深まり、数十万人が直面している困難な状況をさらに悪化させた。MSFはこの殺害を受けて11月、紛争に関わるすべての勢力に対し、人道援助関係者の安全と独立性、および一般市民の安全と移動の自由を尊重するよう要求した。

北部のMSFチームは緊急援助活動を続けているが、治安の悪化が続けば、すでに数年にわたって全く不十分である避難民への援助をさらに縮小せざるを得なくなるだろう。

コートジボワール:深まる危機

2002年に始まったコートジボワールの内戦は、民間人に数千人の死者を出し、絶望的な状況におかれた数十万人を避難に追いやる結果となった。多くの農民の生活手段が破壊され、医療保健体制は深刻な損害を受け、最も弱い立場にいる人びとは基礎的医療や十分な食糧を得ることが出来なくなった。

2004年11月と2005年2月には再び武力衝突が発生し、さらに多くの犠牲者と避難民を出した。この国を北部と南部に分断する約千900キロメートルの境界線(国連軍とフランス軍が警備をしている)に沿った地域では、一般市民はつねに暴力の脅威にさらされている。

暫定政府の樹立によって多少の希望がもたらされたが、マラリアやはしかなどの治療可能な病気に苦しむ何万もの人びとにすぐに援助が行き届くわけではない。医療システムは国の大部分で機能しておらず、境界線の両側で医療プログラムを運営しているMSFは、それぞれの地域で基礎的医療および二次医療を提供する唯一の団体である場合多い。

ブアケ、マン、ダナネの病院とバンゴロ、ギグロ、コウイブリ、ビンホウインの保健センターや移動診療で、小児科診療、救急医療、産科・婦人科診療、外科手術など必須の医療活動にあたっている。西部での移動診療では、さらに孤立した地域に住む人びとに医療を提供している。

マラリアは国内全域で脅威となっており、MSFは2005年だけで7万例以上を治療した。家族の離散と兵士の流入により、多くの女性や少女が性的暴力、売春、望まない妊娠、性感染症(STI)の脅威にさらされた。STIは現地における健康上の問題の1つでしかないが、MSFチームは西部でSTIの比率が高いことに気づき、保健省とともにHIV/エイズと結核の治療活動を開始した。

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