MSFの活動と寄付金の使途 −フランス支部事務局長へのインタビュ−
2005年12月16日掲載
2004年12月26日に発生したスマトラ島沖地震・津波災害から約1年、国境なき医師団(MSF)フランス支部のピエール・サリニョン事務局長はMSFの活動を振り返り、この災害への支援に集まった寄付金の使途について総括した。総額のうち80%が今年度の活動に充てられた。そのうち津波の被災者を対象とした活動費は2,200万ユーロ(約31億2千400万円)である。
- Q.スマトラ島沖地震・津波から1年が経とうとしています。国境なき医師団(MSF)の被災者救援活動をどのようにまとめますか?
- A.2004年12月26日に発生した地震・津波により約10ヵ国でおよそ30万人が亡くなり、沿岸地域は壊滅的な被害を受けました。つまり、大規模な自然災害であったといえます。MSFはタイ、インド、ミャンマー、マレーシアでも小規模な調査・援助活動を行ないましたが、被害が最も大きかったインドネシアとスリランカで集中的に活動を展開しました。被災国および世界各国の援助活動を支援するため、診察、看護、外科手術、心のケア、予防接種などの医療援助を行ないました。また、テント、毛布などの必需援助物資を配布し、水の供給を確保しました。(MSFの活動の詳細はMSFの活動および財務報告を参照)
被災者の死活にかかわる問題は、比較的早い時期にカバーされたといえます。重傷者は治療を受け、大規模な伝染病が発生することもありませんでした。その後は復興が最重要課題となりますが、これは私たちの主な活動分野ではありません。そこで、津波災害に関わる活動の規模を徐々に縮小していきました。MSFはスリランカでの活動を2005年4月末に終了しました。インドネシアではアチェ地方の6地域で活動を続けていますが、今後数ヵ月で規模を縮小する予定です。2005年10月末までに、被災国での活動に2,200万ユーロ(約31億2千400万円)を充てました。
- Q.MSFに寄せられた津波被災者への寄付金の額はいくらでしょうか?どのように寄付金を使ったのでしょうか?
- A.今回の津波災害では、過去に例を見ないほど寄付金が集中しました。MSF全体では、津波発生後数週間で1億1000万ユーロ(約156億2千万円)の寄付金を受け取りました。この額は年間の寄付金の3分の1以上に当たります。
2005年1月3日には、受け取った額が津波緊急援助のために必要とする金額を超えることが分かり、使途を津波援助活動向けに限定した寄付金の受付を終了すると発表しました。必要な金額を超えた分の寄付金を他の緊急援助へ割り当てるため、寄せられた寄付金を他の災害などにも使用する許可を求めました。使途の変更を拒否し払い戻しを求めた寄付者は、全体のわずか1%でした。MSFを支援する方々が寄せる絶大な信頼のおかげで、ニジェールの食糧危機やパキスタン地震など、緊急援助を要する別の地域で大規模な救援活動を展開することができました。2005年にMSFフランス支部は、緊急事態が発生し人命が危険にさらされた地域での活動規模を2倍に拡大することができたのです。2004年には1,600万ユーロ(約22億7千200万円)であった緊急援助費用が、2005年には3,300万ユーロ(約46億8千600万円)となりました。
スマトラ島沖地震・津波からほぼ1年が経った現在、世界中から集まった寄付金の80%が実際の活動に使われました。そのうち5分の1は津波関連の援助活動に、5分の3はその他の危機に充てられました。2006年には残りの20%を緊急活動や忘れ去られた危機の援助に充てる予定です。 - Q.MSFは津波の被災者に対して、より多額の援助金を支出できたのではないでしょうか?
- A.MSFはプログラムを、集まった寄付金の額に応じて決めるのではなく、チームが現地で調査をして明らかになった援助の需要に応じて、またその場に私たちがいることに価値があるかどうかに応じて決定します。
ニジェールのマラディ県にある栄養治療センターでは、入院する子どもの数が2005年に入ってから前年の3倍に増加しました。数万人の子供が短期間で命を失う事態を避けるため、新たに栄養治療センターを開設し、食糧配給を行うなど、大々的に活動を展開する必要があると判断しました。しかし2005年夏の半ばまで、二ジェールの食糧危機はメディアや大半の人道支援団体から忘れられた危機だったのです。MSFのチームは合計で5万人以上の重度の栄養失調児を治療しました。
パキスタンで2005年10月8日に発生した地震の被害を受けた地域では、家屋や医療インフラも打撃を受けました。多数の重傷者を治療し、被災者が風雨をしのげる場所を提供するためには、ここでも大規模な援助活動を行なう必要があるという判断を下しました。緊急の医療活動や、外科手術を行なうためのインフラの整備です。こうした活動は現地の衰弱した住民の死活に直接関わるものだったと認識しています。
津波の被害国では、緊急段階が過ぎた後の復興活動には参加しませんでした。これは私たちの専門ではありません。復興とは国家の責任や世界的な公的資金の提供によるものだからです。復興過程におけるNGOの役割は、国家が利用できる資金や手段に比べればわずかなものです。私たちには復興活動に必要な能力も財力もありません。なぜ他の支援団体に復興活動を下請けに出さなかったのかという質問をよく受けますが、通常MSFは下請けに出すことはしません。寄付者に対し、寄付金の使途について詳細な結果報告をする義務を負っているからです。MSFは融資団体ではないのです。
とは言え、2,200万ユーロの資金により、津波の被災国で大規模な援助プログラムを展開できました。これ以上の額を出費しても、私たちの活動は現地住民にとってさらなる付加価値は持ち得なかったでしょう。
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