地震・津波から1年、MSFの活動および財務報告
2005年12月06日掲載
(2005年12月9日、16日 一部訂正)
国境なき医師団(MSF)は、巨大な津波が東南アジアの各地を襲った2004年12月26日から数日後に、各被災国による援助活動と並行して、医療、食糧、水、シェルターなど基本的物資を必要とする人々のもとに届ける活動を開始した。
MSFは200名を超える外国人派遣ボランティアを派遣した。活動の大半はインドネシアとスリランカのもっとも被害が深刻であった地域で行なったが、タイやマレーシア、インドでも小規模な活動を実施した。MSFが行なった被災地の調査活動によれば、必要な援助は国ごとに異なることが判明したが、ほどなくして医療援助の必要性は大きくないことが明らかになった。
被災国の緊急援助活動と市民団体の活発な対応により、津波発生直後の数日間に多くの人命が救われた。このためMSFは、主な役割は見過ごされている援助の需要を見定めることであると考えた。タイでは、特に不安定な立場に置かれていたミャンマーからの移民労働者の支援にあたった。インドでは心理ケアを提供した。スリランカでは被害が大きく、MSFは当初、医療支援を提供し救援物資を届けた。しかしMSFが最も活動の焦点をおいたのはインドネシアのアチェであった。アチェでは多数の医療従事者が津波の犠牲となり、医療インフラが破壊されていた。
心配されていた伝染病の大流行は起こらなかった。インドネシアでは55名の外国人派遣ボランティアと350名の現地スタッフが活動を続けているが、1年が経過し、MSFはインドネシアでの活動方針を見直している。他の国では津波に関連した援助活動を終了した。来年はアチェでの活動規模を徐々に縮小していく予定である。
MSFは一貫して、援助の必要性のみにもとづいて活動プログラムを決定している。寄付金の余剰分を消費するために活動を行うことはない。MSFのスマトラ沖地震・津波関連の活動のなかでもっとも議論を呼んだ決断は、津波発生から1週間もしないうちに被災者支援に使途の限定された寄付金の受付を終了したことだろう。
この発表にもかかわらず、人びとの驚くべき連帯感から、MSFは合計156億2千万円(1億1000万ユーロ)の寄付金を受け取った。しかし2005年の活動予算としては35億5千万円 (2500万ユーロ)あれば十分であると予想された。そのためMSFは寄付者に連絡をとり、寄付金の使途を限定せず、他の緊急事態や忘れられている危機にも利用できるようにさせてほしいと依頼することにした。反応は予想を超えて肯定的なものであった。MSFが連絡をとった寄付者のうち他に回すのではなく、返金を希望した人は全体の1%であった。
2005年末までにMSFはスマトラ島沖地震・津波支援に寄せられた寄付金の82%にあたる127億9千420万円(9千10万ユーロ)を以下の目的に使用する予定である。
−スマトラ島沖地震・津波被災地での援助活動の資金
35億740万円(2千470万ユーロ)
−ニジェールの食糧危機、ダルフール緊急事態、パキスタン地震など、その他の緊急事態や忘れられている危機への対応
92億8千680万円(6千540万ユーロ)
残高は2006~2007年の活動に割り当て、主に緊急事態や忘れられている危機に利用する。MSFはアチェでの活動も継続する。アチェでは予防接種や母子保健、また結核などの感染症に関して依然として医療援助の需要がある。また心理療法士による心理ケアを提供している他の機関はほとんどないため、心の傷を負った人や紛争で傷ついた人たちが頼ることのできる場が限られている。MSFはまたNGOがほとんど近づけずにいるが数十年にわたる戦闘で多数の死者が出ていることが判明している アチェの内陸部でも調査活動を行っている。
- 1年間の活動概要 -
| 活動の流れ | |
|---|---|
| ・スリランカ: | 12月27日、調査と救援を同時に開始。 |
| ・インド南部: | 12月27日、調査を開始、1月4日から活動を開始。 |
| ・マレーシア: | 12月27日、調査開始。活動は実施せず。 |
| ・インドネシア: | 12月28日、調査と救援を同時に開始。 |
| ・タイ: | 12月29日、調査を開始、30日から病院への緊急支援を開始。 |
| ・ミャンマー: | 12月30日、調査開始。活動は実施せず。 |
| ・アンダマン諸島(インド): | 12月31日:調査開始。活動は実施せず。 |
| ・シムルエ島(インドネシア): | 2005年1月14日、調査と救援を同時に開始。病院への緊急支援を開始。 |
| ・ニアス(インドネシア): | 2005年3月28日、調査と救援を同時に開始。 |
| ・スリランカ: | 2005年4月、他組織に活動引き継ぎ。 |
| ・インド: | 2005年12月、他組織に活動引き継ぎ。 |
地震・津波の発生後、MSFの活動はインドネシアとスリランカに集中したが、タイやインドでも援助を提供した。マレーシア、ミャンマー、バングラデシュでも初期調査活動を行ったが、深刻な医療の不足は報告されなかった。現在MSFはインドネシアのアチェでのみ津波関連の活動を続けている。
■インドネシア
MSFは津波発生の前からインドネシアで感染症患者への援助、暴力や自然災害の犠牲者への援助を行っていた。12月28日、最初のチームがアチェ州の州都バンダ・アチェに到着した。チームは診療所を開設し、調査と救援活動を開始した。津波発生の翌週には約200トンの医薬品、水・衛生関連物資、救援物資が届けられ、数十人の医師、看護師、心理療法士、ロジスティシャン、水・衛生の専門家がアチェに到着した。グリーンピースの船「虹の戦士」号の支援により輸送量を増やすことができた。道路は通行不能だったため、MSFチームはヘリコプターで西部と北東部の海岸に向かった。
1月の終わりには初期の緊急段階は脱し、MSFは活動の中心を被災地域での医療施設の修復と基礎医療の提供に移した。特に地域の人びとの心理ケア面でのニーズに重点がおかれた。
1年が経過して、MSFは緊急援助物資の配給および水・衛生関連プロジェクトの大半を終了、もしくは他団体に引き継いだ。ただし村々や避難民キャンプでの移動診療は継続している。また、アチェ・バラット県の島嶼部やベネル・ムリア県のタケンゴンなどの遠隔地域でも基礎医療の提供を始めている。ベネル・ムリア県では反政府勢力と政府軍のあいだの紛争が長期化したこともあり、医療を受けることは非常に難しくなっている。
アチェで現在もっとも必要とされているもののひとつが心理ケアである。MSFの各プログラムはほぼすべて、心理ケアに関する要素を含んでいる。現在も派遣ボランティアおよびインドネシア人の心理療法士が、毎月数百人の患者に個別の治療を行なっている。
| 活動データ (活動開始以来) | |
|---|---|
| 総診療件数: | 4万1021件 |
| 主な疾患: | 呼吸器感染症、皮膚感染症、急性の下痢 |
| 外科治療件数 / 入院件数: | 517件 |
| 予防接種: | はしか11万1789人、破傷風1万130人 |
| 心理ケア診療数: | 1,770人 |
| 主な症状: | 睡眠障害、心身障害、いちじるしい精神的苦痛、強度の悲しみ、 フラッシュバック |
| 医療施設の修復: | 保健所27ヵ所、病院1ヵ所、井戸の清掃289ヵ所 |
| 仮説シェルター: | 1万張以上のテントを配布 |
| 救援物資: | 1万以上の家族に配布 (衛生物資、毛布、マットレス、貯水容器など) |
| 生活支援: | 220隻以上の丸木船を建造 |
| 活動予算: | 27億6千48万円 (1,944万ユーロ) |
| 2005年1月末時点の活動スタッフ(アチェ):127人の派遣ボランティアと150人の現地スタッフ |
| 2005年11月末時点の活動スタッフ(アチェ):55人の派遣ボランティアと350人の現地スタッフ |
| (MSF は1995年からインドネシアで活動している) |
現在、MSFはアチェ州の6県で活動を行っている。

MSFが現在活動しているアチェ州の地域
バンダ・アチェ / アチェ・ベサル
心理ケア
アチェ・ジャヤ県ラムノ
心理ケア
診療所1ヵ所 (修復済み)
外科
プレハブの診療施設2ヵ所
移動診療
はしかなどの予防接種
結核治療
水・衛生
食糧以外の物資の配給
保健省職員の研修
べネル・ムリア県タケンゴン
簡易医療施設の支援
医療施設における水・衛生設備の修復
保健省職員の研修
アチェ・バラット県ムラボ
複数の診療所 (内陸の紛争地域を含む)
心理ケア
水・衛生
保健省職員の研修
ピディ県シグリとブルヌン
2つの病院の支援(外科手術と術後ケア)
遠隔地域3ヵ所での移動診療
診療所3ヵ所
診療所のネットワーク支援
心理ケア
水・衛生
アチェ・ウタラ県ロクスマウエ
心理ケア
■スリランカ
MSFの初期調査活動によって海岸の村の損壊にばらつきがあることが判明した。また医療従事者らがすでに負傷者の治療にあたっていることが分かった。また、負傷者の多くが負傷後3日以内に治療を受けていた。地元市町村が避難民のために宿泊施設や共同台所を準備した。MSFチームは医療のみに特定せず、住民からのニーズに臨機応変に対応した。津波が発生して4週間後には、MSFはアンパラ、バティカロア、トリンコマリ、ハンバントタ、バンニ、マタラ地区で活動していた。
被災地には多くの救援物資が運ばれたが必ずしも住民のニーズに適合したものではなく、団体間の活動の調整も困難であった。津波発生後の数週間でありあまる量の援助・救援物資を受け取った地域もあった一方、何も受け取っていない地域もあった。ある避難民キャンプでは、MSFの移動医療チームがその日に到着した18番目の医療チームだったこともあった。あまりにも多くの衣服が届き、住民が途方にくれている村もあった。逆に、橋が壊れたために孤立していたある村では975世帯が救援物資を全く受け取っていないことが分かった。しかし、やがて何らかの援助がほとんどの被災地に届くようになり、1月半ばまでには160を上回る非政府組織(NGO)が現地で活動を行っていた。
緊急段階の間MSFは、移動診療と既存の医療機関での診療、救援物資の配布、福祉施設や一時滞在キャンプで生活する避難民の生活状況の改善を活動の中心とした。飲料水や衛生設備の提供、テントの配給、臨時シェルターの建設、衛生キット、毛布、マットレス、蚊帳、貯水容器などの援助物資の配給を行った。
次の段階として、MSFはもっとも困難な立場にある人びとの家屋と生活の立て直しに活動の焦点を当てた。主な活動対象は漁村や資源の乏しいタミール・イーラム解放の虎(LTTE)の支配地域に生活する家族とした。MSFは土地からがれきの撤去、住宅の建設、工具や台所用具などの援助物資の配布を支援した。また現地のNGOであるShadeや Payasos Sin Fronteras(「国境なき道化師」の意)と協力して心理ケアの提供を開始した。
| 活動データ (活動開始以来) | |
|---|---|
| 主な疾患: | 7,700人の観客に演劇を上演(国境なき道化師); 9,200人へのカウンセリング (Shade) |
| 主な症状: | 深い無力感と恐怖感、心身障害、悪夢、自殺願望 |
| 水・衛生: | 4ヵ月間で2万人に水を提供。700以上のトイレの設置 |
| 仮設シェルター: | 2,300張以上のテントを配給。1,000ヵ所以上のシェルターの建設。 |
| がれきの撤去: | 880以上の土地(住民5千人)でがれきを撤去 |
| 住居: | 60戸の住宅を建設。10万5千個のレンガを製造、 LTTEが支配する地域のれんが製造所2ヵ所を復旧。 |
| 救援物資: | 6,000以上の家族に配布 (衛生物資、毛布、マットレス、貯水容器など) |
| 生活支援: | 魚網1,600枚を配給。漁師の家族に丸木舟20隻とモーターボート4隻を寄贈。 |
| 活動予算: | 5億8千220万円(410万ユーロ) |
| 2005年1月末時点のスタッフ:36人の派遣ボランティア |
| 2005年4月に活動終了 (MSFは1986年から2004年3月までスリランカで活動を行っていた。津波災害後活動を再開した) |
■インド
インドでは、政府の迅速な対応と地域社会の活発な活動により、津波によって生じた緊急医療のニーズはほぼ満たされていた。多くの地域で心理的トラウマが主要な問題となっており、心的外傷後ストレス障害 (PTSD)で苦しんでいる人もいた。これに対してMSFは、カッダロールとナガパッティナム地区で、地元NGOのボランティアにカウンセラーや心理社会的相談員のトレーニングを行うなどの心理ケア活動を開始した。南部のタミル・ナードゥ州では医学生を対象に、避難生活を送る人びとのなかから健康上の問題や心理的トラウマを抱えている人を見つけ出し、必要な治療を受けられる機関に迅速に差し向けられるようトレーニングを行った。
活動予算: 8千662万円(61万ユーロ)
| 2005年1月末時点のスタッフ: | 6人の派遣ボランティアと30人の現地スタッフと カウンセラー津波救援プログラムは現在引継ぎ中 |
|---|---|
| (MSFは1999年からインドで活動しており、国内各地で医療援助と心理ケアの提供を続けている) | |
■タイ
タイの緊急援助活動は、おおむね迅速でよく組織されていた。MSFは津波によって被害を受けたミャンマーからの移民労働者の状況改善を支援することに決定した。タイ南部西海岸の6県では5万人のミャンマー人移民労働者が合法的に登録されていたが、実際には50万人以上が暮らしていると考えられている。津波の後、5千人以上のミャンマー人が行方不明になったが、それ以外にも身分証明書をなくしたり、観光業の破綻のあおりを受けて失業するなど、不安定な状況におかれる人が多数にのぼった。MSFは現地のNGOと協力し、パンガー地方の各地から来た移民に対して基本的な医療や衛生について情報を提供し、彼らが必要な医療を受けられるようにするためのワークショップを開始した。
活動予算: 1千562万円(11万ユーロ)
| 2005年1月末時点のスタッフ:5人の派遣ボランティアと3人の現地スタッフ |
| MSFは1983年からタイで活動しており、エイズ治療と難民や移民への援助を行っている。 |
■ミャンマー
MSFの2つのチームがミャンマーの南岸に派遣された。1つ目のチームは12月31日コーウタンに到着し調査活動を始めたが、深刻な医療不足は見られなかった。別のチームはMSFの船を用いてマイエク群島の北部から南部へと調査を行ない、物質的な被害はあるものの、緊急援助を必要とする地域はないとの結論を得た。
MSFは1992年からミャンマーで活動しており、マラリアや結核、またHIV / エイズなど性感染症の患者の治療を続けている。
■マレーシア
津波発生の数日後、MSFの2人の医師がペナンからタイ国境までの状況調査を完了した。人びとは学校やモスクに避難していたが、政府は避難所に清潔な水を供給し、さまざまな現地組織がすでに家を失った人びとや被災した人びとに援助活動を行っており、保健施設も機能していた。このためMSFの活動の必要はないと判断した。
マレーシアでは、MSFは活動していない。
- 1年間の財務概要 -
| MSF活動予算 (1ユーロ=142円) | |
| 億円 (百万ユーロ) | |
| - インド | 0.87 (0.61) |
|---|---|
| - インドネシア | 27.6 (19.44) |
| - マレーシア | 0.04 (0.03) |
| - スリランカ | 5.82 (4.1) |
| - タイ | 0.16 (0.11) |
| 合計 | 34.5 (24.29) |
| MSF支出(2005年10月末現在、1ユーロ=142円) | |
| 億円 (百万ユーロ) | |
| - インド | 0.74 (0.52) |
|---|---|
| - インドネシア | 25.63 (18.05) |
| - マレーシア | 0.04 (0.03) |
| - スリランカ | 5.69 (4.01) |
| - タイ | 0.16 (0.11) |
| 合計 | 32.26 (22.72) |
資金の調達状況
| 億円(百万ユーロ) | |
| 集まった寄付金 | 156.47 (110.19) 100% |
| 内訳 | |
| ・使途を限定されていない寄付金、 あるいは他の緊急支援に振り当てられた寄付金 | 109.01 (76.77) 69.7% |
| ・返金された寄付金 | 1.80 (1.27) 1.1% |
| ・津波支援活動に限定された寄付金 | 45.65 (32.15) 29.2% |
| 内訳 | |
| −2004年、2005年の津波支援活動予算 | 34.49 (24.29) 22.0% |
| −他の緊急支援に振り当てられる予定の寄付金 | 11.16 (7.86) 7.1% |
MSFは津波発生後自発的に寄付を寄せてくださった寄付者の皆様に大変感謝しています。集まった寄付金を用いて、これからも被災地および他の緊急事態や忘れられた危機に見舞われている地域で医療ケアを提供していきます。
津波発生後に寄せられた過去に例を見ない皆様の善意が、MSFのこれまでにない決定につながりました。MSFは、津波発生から数日の間に災害活動のものとしては過去最多の寄付金を受け取ったため、災害発生から1週間足らずの1月第1週に、津波関連の援助活動に使途が限定された寄付金の受付を終了しました。この発表にもかかわらず、MSFが津波緊急援助費用として必要とする金額、あるいは単一の災害に対する活動能力に見合った金額を上回る寄付金がさらに集まる見通しとなりました。
そこでMSFは寄付者に連絡をとり、寄付金の使途を限定せずに他の緊急事態や忘れられている危機にも利用できるようにさせてもらえるよう依頼しました。反応は予想を超えて肯定的なものでした。
2005年末までにMSFはスマトラ島沖地震・津波支援に寄せられた寄付金の82%にあたる127億9千420万円(9千10万ユーロ)を、以下の目的に使用する予定です。
−スマトラ島沖地震・津波被災地での援助活動の資金
(35億740万円、2千470万ユーロ)
−ニジェールの食糧危機、ダルフール緊急事態、パキスタン地震といった他の緊急事態や忘れられている危機への対応 (詳細はこちら)
(92億8千680万円、6千540万ユーロ)
私たちは、寄付者の方々がMSFを信頼し、より必要とされている場所に寄付金を使うことを許可してくださったことに励まされています。
スマトラ島沖地震・津波寄付金 使用使途
津波の援助活動に使用した35億740万円(2千470万ユーロ)のうち、5千680万円 (40万ユーロ)は間接的な活動費用である。これはMSFの各オペレーション支部(ベルギー、フランス、オランダ、スペイン、スイス)が今回の援助を直接行なうにあたって生じた支出の一部である。
他の緊急事態や忘れられた危機への使用が認められた寄付金は21の地域に割り当てられた。主な地域はパキスタン、ニジェール/ナイジェリア、チャド、スーダン、コンゴ民主共和国(DRC)、アンゴラ*である。
活動の詳細は以下の通りである。
■パキスタン(地震)−
MSFは2005年10月8日に発生したパキスタン地震以降、パキスタン政府の救援活動を支援し、カシミール地方および北西辺境州の12ヵ所で常時医療活動を継続している。2ヵ所の野外治療施設の運営、外科処置の実施、毎日1,000件以上の診察、子どもへのはしか予防接種と負傷者への破傷風予防接種を行なっている。また、防寒用テント、毛布、調理器具、衛生物資の配布も継続している。
この緊急援助での活動人数(2005年末時点):
外国人派遣ボランティア120人、現地スタッフ350人
■ニジェール/ナイジェリア(栄養失調)−
ニジェールでは栄養失調は長期に渡る問題であるが、2005年には例年にない規模で栄養失調が蔓延するという緊急事態が発生した。MSFは4月の時点で警告を発していたが、この食糧危機に対する国際社会の反応は遅く不適切であった。MSFの集中栄養治療センターには重度の栄養失調の子どもが6万人以上入院し、その90%が回復した。隣国のナイジェリアでは、はしかの予防接種率が低いためはしかが流行し、子どもの栄養失調が悪化する主な原因となった。
この緊急援助での活動人数(2005年末時点):
外国人派遣ボランティア86人、現地スタッフ1,035人
■チャド(ダルフール難民、栄養失調、はしか)−
スーダンのダルフール地方から隣国チャドへ避難した人はこの2年で約20万人にのぼるとみられ、これらの人びとは避難民キャンプで過酷な生活状況に直面している。MSFは難民が利用しやすいアドレ病院で医療、外科処置、母子医療を、また4ヵ所の避難民キャンプで食糧と避難所を提供している。2005年初頭には髄膜炎の発生に伴い、約7万人の難民と住民に予防接種を実施した。また2005年4月頃に首都ンジャメナを含むその他の地域ではしかが発生した際には、数万人の子どもを対象にした集団予防接種を行なった。
チャドでの活動人数(2005年9月時点):
外国人派遣ボランティア56人、現地スタッフ405人
■スーダン(ダルフール地方、南スーダン)−
スーダンで内戦が始まりダルフール地方の住民が家を追われてから2年が経過したが、200万人の避難民の生活はほとんど改善しておらず、紛争が続いているため、引き続き人道的援助が必要とされている。下痢・呼吸器感染症・マラリアの感染率は高く、多くの地域で水・衛生状態は劣悪で、髄膜炎や肝炎も流行している。MSFはダルフール地方全域の32ヵ所で医療、食糧援助、安全な水を提供している。
スーダン南部では停戦協定が結ばれたが、病気と栄養失調が原因で頻発する医療上の緊急事態、散発的に起こる紛争、ほとんど治療が受けられない地域への避難民の大量帰還という問題を抱えている。このため人道的援助が引き続き必要である。MSFは病院、医療センター、移動診療所を通じて基本的医療を提供し、マラリア・アフリカトリパノソーマ症・カラアザール(内臓リーシュマニア症)患者を治療し、上ナイル州、バハル・エル・ガザル州、西赤道州、ジョングレイ州で栄養失調の子どもとその家族向けに食糧援助を提供した。
スーダンでの活動人員数(2005年9月時点):
外国人派遣ボランティア348人、現地スタッフ4,871人
■コンゴ民主共和国(紛争と緊急事態への対応、医療)−
MSFはスマトラ沖地震・津波の支援金のうち使途を限定しないものを、内乱が続くコンゴ民主共和国(DRC)東部での活動の一部とコンゴ緊急対応部の支援のために用いている。MSFはイトゥリ地方での紛争から避難してきた数万人に緊急援助を実施した。2005年6月にはMSFのスタッフ2人が一時誘拐されたため、残念ながらブニア郊外での移動診療活動の中断を余儀なくされた。反政府勢力と政府軍の衝突が大混乱を引き起こし続けているカタンガ州では、一次・二次医療、栄養失調の治療、緊急外科手術、移動診療による医療ケア、長期の結核治療、性的暴力の被害者向けの治療など、幅広い医療サービスを提供してきた。MSFは9年前に感染症、避難、自然災害などの緊急事態に対応するため、コンゴ緊急対応部("Pool d'Urgence Congo(PUC)")を創設した。この緊急援助チームは2005年、DRC国内各地での肺ペスト、はしか、出血性下痢、コレラの発生に対応するとともに、カタンガ州の1万5千人の避難民を引き続き支援した。
イトゥリ地方、カタンガ州、PUCでの活動人数(2005年9月時点):
外国人派遣ボランティア71人、現地スタッフ1,150人
(DRC全体ではそれぞれ233人、2,133人)
■アンゴラ(マールブルグ出血熱、ねむり病)−
アンゴラ北部のウイジェ州で2005年3月にマールブルグ出血熱の発生が確認されてから数日後、MSFはアンゴラ保健省を支援するために現地入りした。活動には患者を治療する隔離病棟の設営と管理、病院の感染症対策の維持、全面的な予防措置の強化が含まれた。MSFはまた、患者の発見と感染者と接触した恐れのある人の追跡、安全な埋葬の実施、給水・衛生システムの維持も支援した。加えて地域社会での知識の普及、疫学的監視・分析も実施した。患者の大半はウイジェ州で報告されたが、隔離病棟は首都ルアンダ、ウイジェ州のソンゴとネガゲ、クワンザ・ノルチ州のカマバテラでも設営された。
アンゴラではアフリカトリパノソーマ症(ねむり病)がなかなか制圧されないが、2005年はスマトラ島沖地震・津波の支援金の一部をベンゴ州の州都カシトで実施したねむり病プログラムの支援に役立てた。MSFは患者の治療にくわえ、特に農村部で新規感染者の発見と治療を行なう積極的な検査キャンペーンを実施した。2005年初頭以降、MSFは1万1千人以上を検査し、計215人の患者を治療した。
アンゴラでの活動人員数(2005年9月時点):
外国人派遣ボランティア80人、現地スタッフ1,099人
*アンゴラ、ブルキナ・ファソ、チャド、中国、コンゴ民主共和国(DRC)、ギニア、ハイチ、インド、コートジボワール、マリ、モーリタニア、モザンビーク、ミャンマー、ニジェール/ナイジェリア、パキスタン、ペルー、東南アジア(タイでのエイズ治療、インドネシアでの結核/はしかの治療、スーダン、ウガンダ、ジンバブエ)である。
関連情報
- 2009年11月6日
- インドネシア:スマトラ沖地震 被災地で活動を続ける現地人医師からの報告
- 2009年11月2日
- インドネシア:スマトラ島沖地震後1ヵ月間の活動概要
- 2009年10月30日
- フィリピン、インドネシア、サモア、インド被災地におけるMSF緊急チームの援助活動
- 2009年10月14日
- インドネシア:スマトラ島沖地震被災者の証言
- 2009年10月14日
- インドネシア:スマトラ島沖地震 MSFは援助の届きにくい地域に活動を集中(10月9日現在)

















