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  4. 2009年度国際活動報告書 要約

国境なき医師団(MSF)2009年度アクティビティ・レポート-要旨

国境なき医師団(MSF)は、2009年度、世界64ヵ国で、紛争、災害、感染症、およびその他の危機に苦しむ人びとに、独立した医療援助を行った。

2009年に実施した主な医療活動と件数

銃を突きつけられレイプの被害にあった43歳の女性は、MSFがコンゴ民主共和国のマシシで行う移動診療で、医療と心理ケアを受けた。
銃を突きつけられレイプの被害にあった43歳の女性は、MSF
がコンゴ民主共和国のマシシで行う移動診療で、医療と心理
ケアを受けた。
  • 約750万件の診察
  • 約4万9600件の外科手術
  • 約15万4000人の重度栄養失調児の治療 ほか多数

最も致死率の高い病気への取り組み

MSFは、最善の医療ケアを提供する方法を常に模索している。2009年に行った活動は、以下のとおり。

村や学校を訪れ、マラリアの予防について話すMSFのスタッフ。マリ南部カンガバ地区では、マラリアが流行し、主な死因となっている。
村や学校を訪れ、マラリアの予防について話すMSFのスタッ
フ。マリ南部カンガバ地区では、マラリアが流行し、主な死因
となっている。
  • マラリア
    110万人の患者を治療。
  • HIV/エイズ
    19万人の患者を治療。 うち、16万2000人以上の患者に抗レトロウイルス薬(ARV)治療を提供。
  • コレラ
    非衛生な飲み水などにより起こる急性胃腸感染症。
    13万200人の患者を治療。
  • 髄膜炎
    接触感染し、命を奪う恐れのある細菌性疾患。
    7万8000人の患者を治療。
    790万人以上に予防接種を実施。
  • 結核
    2万人の患者を治療。
    うち、940人以上が多剤耐性結核患者。
  • アフリカ睡眠病(アフリカトリパノソーマ症)
    サハラ以南のアフリカの風土病である寄生虫感染症。
    1800人の患者を治療。
  • カラアザール(内臓リーシュマニア症)
    バングラデシュ、ブラジル、インド、ネパールおよびスーダンの風土病で、熱帯性の寄生虫症。
    3700人の患者を治療。

顧みられない病気への対策

MSFの医師が、多剤耐性結核患者の病気の進展具合を診断する。MSFは、2006年2月からインドのムンバイ北部カー地方で診療所を運営している。
MSFの医師が、多剤耐性結核患者の病気の進展具合を診
断する。MSFは、2006年2月からインドのムンバイ北部カー
地方で診療所を運営している。

顧みられない病気に関しては、依然として国際的な関心が十分に高まっておらず、特にアフリカ睡眠病、カラアザール、シャーガス病については、500万人以上の人びとが感染の危険にさらされている。こうした事態を受けて、MSFは2009年に、これらの病気をより効果的に治療するためにニーズが高い新薬の研究が継続的に行われるよう、今後6年間で「顧みられない病気のためのイニシアティブ(DNDi)」に対して1800万ユーロ(約19億1500万円)の支援を行うことを表明した。また、自らの活動地におけるプログラムを通して、医薬品の開発に必要な臨床研究の支援も続ける予定である。MSFは2009年に、これら3つの病気の患者6000人以上を治療した。

HIV/エイズと結核への取り組みを継続

HIV/エイズと結核の流行を減らすための取り組みも、手をゆるめることなく継続している。MSFが受け入れているHIVの治療を必要とする患者の多くは、へき地に住む貧困層で、通常であれば治療を受けられない人びとである。しかし、MSFは可能な限り、こうした治療を受ける機会のない、または少ない人びとを支援する取り組みも継続して行った。検査とカウンセリングを行い、ARV治療を無償で提供し、母子感染率を低下させたほか、度々HIV患者自身をその他の“患者のため相談員”となれるように指導し、他の患者が治療を順守できるよう支援にあたってもらった。一例としては、レソト1国だけで5万4000件のHIV検査を行い、6000人の患者がARV治療を開始した。

心理ケアおよび性暴力被害者への診療

MSFはまた、紛争、急性および慢性疾患、災害の影響に苦しむ人びとを支援するために、10万9000人以上の患者に心理ケアの個別カウンセリングを提供し、8000回近くのグループカウンセリングを行った。さらに、世界各地で実施している92のプログラムを通じて、性暴力の被害者1万3500人以上の支援にあたった。

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2009年を通した主な活動

2009年度版アクティビティ・レポートに掲載され、現在も継続して行われている主な活動は以下のとおり。

医師は、診断の記録を書き留める。アフガニスタンのカブール東部にある、アーメッド・シャー・ババ病院にて。
医師は、診断の記録を書き留める。アフガニスタンのカブー
ル東部にある、アーメッド・シャー・ババ病院にて。
  • アフガニスタン:活動の再開
    紛争地帯であるアフガニスタンでは、2004年に5人のMSFスタッフが殺害されてから活動を停止していたが、2009年に活動を再開した。首都カブールとヘルマンド州を拠点に、国内の住民に医療援助を提供したほか、隣国パキスタンでも、スワート郡の戦闘から避難してきたおよそ100万人の人びとに対応するため、マルダン郡にある基幹病院の支援を行った。
  • イラク:心理ケアユニットの開設
    治安状況が大幅に改善したことを受けて、9月にはバグダッド、12月にはファルージャに心理ケアユニットを開設した。
  • アフリカ西部:集団予防接種を実施
    髄膜炎を中心に大規模な集団予防接種を実施した。ナイジェリアとニジェールでは合計でおよそ800万人に接種を行った。
  • 自然災害への対応
    たとえば、ブルキナファソの首都ワガドゥグでは、9月に1年分の雨量を1日で記録したために洪水が発生。その影響で家を失った15万人の人びとに援助を提供した。
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困難を増すMSFの活動

紛争地域の人びとへ医療を届けることは依然として最優先事項だが、スタッフの身の安全が確保できず、武力衝突で身動きがとれない住民へのアクセスが困難になる中、活動はますます困難となっている。武装勢力が人道援助団体を歓迎することはほとんどなく、結果としてしばしば活動を妨害され、スタッフの安全が脅かされるなどの事件が起きている。2009年にMSFの活動が妨げられた事例は以下のとおり。

この母親と娘は、パキスタンのマラカンド保護区で発生した暴動から逃れ、5時間歩いてサマー・バーグ避難民キャンプにやってきた。
この母親と娘は、パキスタンのマラカンド保護区で発生した
暴動から逃れ、5時間歩いてサマー・バーグ避難民キャンプ
にやってきた。
  • ソマリア:スタッフの拉致や死亡を受け、一部で活動を中断・閉鎖
    戦争で荒廃したソマリアのバコール地方で、MSFのスタッフ2人が拉致され、10日間の拘束を経て解放された。その後ヒーラーン地方では、爆発によってMSFのスタッフ1人を含む30人が死亡し、この爆発をきっかけに首都モガディシオ北部で激しい戦闘が再開された。これらの出来事などを受けて、MSFはソマリア南部および中部で運営する最大の医療施設と他の診療所4ヵ所を閉鎖し、モガディシオでの活動を一時中断した。こうした困難にもかかわらず、1300人以上のソマリア人スタッフが、ケニアのナイロビに拠点を置くスタッフの協力のもと、5歳未満の子ども23万8000人を含む65万件の診察を行った。スタッフは避難民に医療を提供、またコレラの流行にも対応したほか、4つの地方で大規模な集団予防接種を実施して7万3000人の子どもにはしかの予防接種を行った。
  • パキスタン:紛争の拡大により援助活動が困難に
    紛争が急速に拡大し、200万人以上の人びとが避難した。さらに、救急車で戦闘による負傷者のもとへ向かっていたMSFのスタッフ2人が殺害された。このようにMSFの車両が直接攻撃されたことや、この地域での武力衝突が拡大し続けていることを受けて、MSFはスワート郡における活動を停止した。また、南ワジリスタン自治区では戦闘により移動が制限され、そこに避難している人びとに援助を提供できない状況となった。それでも、北西辺境州(当時。現在のカイバル・パクトゥンクワ州)、連邦直轄部族地域、およびバルチスタン州の計12ヵ所以上の地域で、戦闘による負傷者や国内避難民に対する医療、および母子医療を含む緊急医療や救援活動を提供することができた。
  • コンゴ民主共和国:深刻な医療ニーズに対応
    戦闘が続き、住民に深刻な医療ニーズが生じた。MSFはこれに対応し、南北キブ州において、53万件を超える診察や、65万人の子どもを対象にはしかの予防接種を実施したほか、レイプ被害者5600人のケアを行った。
スーダン南部のナーンディで、はしかの予防接種を実施した。この町には、多くの国内避難民が押し寄せている。
スーダン南部のナーンディで、はしかの
予防接種を実施した。この町には、多く
の国内避難民が押し寄せている。
  • スーダン:医療ニーズの高まりと政府による国外退去命令
    紛争が激化し、病気の流行も発生したことから、2009年、MSFはいくつかの緊急援助活動をスーダン南部で開始した。国内各地ですでに緊急事態レベルに達していた医療ニーズは、さまざまな勢力の間で衝突が発生し、数百人の死者と数千人の国内避難民が生じた2009年の間に、飛躍的に高まった。スーダン西部のダルフール地方では、特にスーダン政府が13の国際援助団体を国外退去させたため、人びとにとって医療を受けることはより困難になった。それでもMSFは、16万8000件を超える診察および2万8000件を超える産前検診を行い、約2500人を病院に受け入れ、マラリア患者約4500人を治療した。
  • パレスチナ:イスラエル軍による停戦発表後、救援活動を開始
    2008年12月27日、イスラエル軍がパレスチナ自治地区に対して大規模な軍事作戦を開始した。戦闘が22日間続いた結果、5300人が負傷し、子ども300人を含むおよそ1300人のパレスチナ人が命を落とした。1月18日にイスラエル軍が停戦を発表し、MSFは外科チームと21トンの物資をガザ市に送ることができた。その直後にMSFは緊急外科手術センターを開設し、多くの負傷者の治療にあたった。1月から7月までの間に行った外科手術は500件を超える。
  • スリランカ:武力衝突で身動きがとれない人びと
    多くの一般市民が、内戦によって攻撃を受けやすい状況におかれることとなった。安全な場所に避難しようとしても、武力衝突で身動きがとれなくなるという場合が大半であり、医療や援助を受けることが極めて困難であった。多くの場合、こうした人びとが援助従事者とようやく接触できた頃には、すでに彼らの健康状態は危機的な状況になっていた。
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MSFがプログラムを実施している国(64の国と地域、アルファベット順)

下記の国々で、約4700人の海外派遣スタッフが、約2万400人の現地スタッフとともに活動しました。
2009年、日本支部からは19の国と緊急支援に資金が提供されました。各国をクリックすると詳細ページが表示されます。

アフガニスタン アルメニア バングラデシュ ボリビア ブラジル ブルキナファソ
ブルンジ カンボジア カメルーン 中央アフリカ
共和国
チャド 中国
コロンビア コンゴ
民主共和国
ジブチ エチオピア フランス グルジア
ギリシャ グアテマラ ギニア(共和国) ハイチ ホンジュラス インド
インドネシア イラン イラク イタリア ケニア キルギスタン
レバノン レソト リベリア マラウイ マリ マルタ
モルドバ モロッコ モザンビーク ミャンマー ネパール ニジェール
ナイジェリア パキスタン パレスチナ
自治区
パプア
ニューギニア
フィリピン ロシア連邦
シエラレオネ ソマリア 南アフリカ
共和国
スリランカ スーダン スワジランド
スイス シリア タイ トルクメニスタン ウガンダ ウクライナ
ウズベキスタン イエメン ザンビア ジンバブエ
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主な財務データ

1971年の設立以来、MSFは資金の大部分を一般の人びとからの寄付に依り、政治的、宗教的、経済的、その他すべての組織や権力からの徹底した独立を貫いている。2009年、MSFの全体予算は6億6500万ユーロ(約707億5800万円)を超え、前年度より増加、また割り振りは以下のとおり。


MSFの救急車で、母親と生まれたばかりの子どもを搬送するところ。ブルンジにて。

MSFの救急車で、母親と生まれたばかりの子どもを搬送するところ。ブルンジにて。