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  4. 2008年度国際活動報告書 要約

国境なき医師団(MSF)2008年度 アクティビティ・レポート - 要旨

国境なき医師団(MSF)は、2008年、世界65ヵ国の国々で、紛争、災害、感染症、その他の危機に苦しむ人びとに、独立の立場に立って医療援助を行った。

2008年に実施した主な医療活動と件数

パキスタン北西辺境州マルダン郡のMSF医療施設で避難民の診療にあたる外国人派遣スタッフ。2008年8月の武装勢力の戦闘開始後、200万人以上が家を追われた。
パキスタン北西辺境州マルダン郡のMSF医療施設
で避難民の診療にあたる外国人派遣スタッフ。2008
年8月の武装勢力の戦闘開始後、200万人以上が
家を追われた。
  • 約880万件の診察
  • 約4万7500件の外科手術
  • 約20万人の重度栄養失調児の治療 ほか多数

最も致死率の高い病気への取り組み

MSFは最善の治療を提供することによって、世界中の最も致死率の高い病気と闘う方法を模索している。2008年に行った活動は、以下のとおり。

シャーガス病は南米を中心に、1500万人が感染、毎年1万4000人が命を落としている。
シャーガス病は南米を中心に、1500万人が感
染、毎年1万4000人が命を落としている。
  • シャーガス病
    ほとんどが南米で発見され、適切な治療がなければ、死に至る恐れがある。
    2000人以上のシャーガス病患者を治療。
  • コレラ
    非衛生な飲み水などにより起こる急性胃腸感染症。
    6万8000人を超えるコレラ患者を治療。
  • エイズ
    22万7000人以上のエイズ患者を治療。
    うち13万人以上に抗レトロウイルス薬(ARV)治療を提供。
  • アフリカ睡眠病(アフリカトリパノソーマ症)
    サハラ以南のアフリカの風土病である寄生虫感染症。
    1900人以上のアフリカ睡眠病患者を入院患者として受け入れ。
  • リーシュマニア症
    バングラデシュ、ブラジル、インド、ネパールおよびスーダンの風土病で、熱帯性の寄生虫症。
    4400人以上のリーシュマニア症患者を治療。
    重症型の内臓リーシュマニア症(別名、ヒンズー語で「黒熱病」を意味する「カラアザール」)は、治療を行わなければ死に至る。
  • インドのビハール州は世界で最も内蔵リーシュマニア症患者が集中する地域。患者は極貧状態で、治療のためには地域社会での情報提供・教育活動の強化が必要だ。
    インドのビハール州は世界で最も内蔵リーシュ
    マニア症患者が集中する地域。患者は極貧
    状態で、治療のためには地域社会での情報
    提供・教育活動の強化が必要だ。
  • マラリア
    ひきつけや昏睡を招く場合があり、その際には治療を行わなければ死に至る。
    125万人以上のマラリア患者を治療。
  • 髄膜炎
    接触感染し、命を奪う恐れのある細菌性疾患。
    7100人以上の髄膜炎患者を治療。また、約70万6000人に予防接種を実施。
  • 結核
    毎年、900万人が活動性結核を発症し、うち200万人近くが命を落としている。
    2万9000人の結核患者を治療。うち971人は多剤耐性結核患者。

心理ケアおよび性暴力被害者の診療

暴力、急性/慢性疾患、災害などに苦しむ人びとに心理ケアを提供するとともに、世界各地で実施している117のプログラムを通じて、性暴力の被害者1万5000人以上の診療にあたった。

受診機会の拡大と新薬開発への資金拠出を求めるキャンペーン

MSFは、人びとの受診機会の拡大や、顧みられない病気を対象とした新薬開発のための資金拠出を呼びかけるキャンペーンを継続して行っている。

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2008年の緊急および強化活動

2008年5月2日、サイクロン「ナルギス」はミャンマー南部を通過、すべてを破壊し尽くした。死者・行方不明者は14万人にのぼり、現在も復興が進められている。
2008年5月2日、サイクロン「ナル
ギス」はミャンマー南部を通過、す
べてを破壊し尽くした。死者・行方
不明者は14万人にのぼり、現在
も復興が進められている。
  • ミャンマー:サイクロン災害
    イラワディ・デルタ地域を通過したサイクロン「ナルギス」の生存者50万人を援助。48時間以内に複数のMSFのチームが被災地に入り、援助が届かない多くの遠隔地で750人のスタッフが交代で、医療、食糧、避難用テントなどを配布し、心理・社会的支援を行った。
  • ジンバブエ:コレラ流行
    ジンバブエでは、医療制度が崩壊し、水と衛生に関わるインフラがほとんど停止状態となり、コレラの流行が助長され、手遅れになる恐れがあった。MSFはすべてのコレラ感染地域にチームを派遣して活動を行った数少ない援助団体のひとつ。
  • アフリカ南部:結核とHIVの二重感染
    この二重感染が風土病と化す中、MSFは現地政府や資金拠出先を繰り返し訪問して、新しい診断・治療ツールの研究開発への投資を呼びかけ、住民が診察や治療をより受けやすくなるよう努力を重ねている。

困難を増すMSFの活動

紛争地域の人びとへ医療を届けることは最優先事項だが、スタッフの身の安全が確保できず、武力衝突で身動きが取れない住民へのアクセスが困難になる中、活動の実施はますます厳しくなっている。武装勢力がMSFを歓迎することはほとんどなく、しばしば活動が妨害され、スタッフが脅威にさらされている。

コンゴ民主共和国の北キブ州で、村を襲撃され、負傷した少年バハティ。州都ゴマの西にあるキロチェ病院で治療を受けた。非道な暴力が、いまも続いている。
コンゴ民主共和国の北キブ州で、村を襲撃され
、負傷した少年バハティ。州都ゴマの西にある
キロチェ病院で治療を受けた。非道な暴力が、
いまも続いている。
  • ソマリア:外国人派遣スタッフを撤退
    戦闘下にあるソマリアの首都モガディシオにおいて、負傷者約2300人、重度の栄養失調にある子ども1万人に治療を行った。一方で、治安の悪化により救急車での搬送サービスを強化することはできなかった。2008年には、南部の港町キスマヨでスタッフ3名が武装勢力に殺害され、北東部の都市ボサソでは2名が拉致されたことを受け(後に解放)、すべての外国人派遣スタッフを引き揚げざるをえなくなった。
  • パキスタン:救急車による搬送サービスを中止
    パキスタンでは、政府軍と民兵組織間の武力衝突で、数百万人の市民が避難を余儀なくされた。戦闘で負傷した人びとを病院に収容し治療するために救急車を運転していたMSFスタッフ2名がスワート郡で十字砲火に巻き込まれ、落命。救急治療に欠かせない救急車による搬送サービスを中止せざるを得なくなった。
  • コンゴ民主共和国:東部で活動の継続が困難に
    コンゴ民主共和国(以下「コンゴ」)では、北キブ州で新たな武力衝突が発生し、数十万人の住民が近隣地域への避難を余儀なくされた。MSFの複数のチームがゴマおよびその周辺で活動を行い、移動診療によって、戦闘下でも診療を続けている病院を援助した。しかし、コンゴ東部では治安悪化のために、活動を継続することが依然として困難になっている。
  • ガザ地区へのイスラエル地上軍進攻では、死傷者の半数は女性と子どもと報じられた。MSFの現地スタッフもまた、空爆によって家族を失ったり、家を捨て避難したりしている。
    ガザ地区へのイスラエル地上軍進攻では、死
    傷者の半数は女性と子どもと報じられた。MSF
    の現地スタッフもまた、空爆によって家族を失
    ったり、家を捨て避難したりしている。
  • スーダン:独立した立場での活動が事実上不可能に
    スーダン・ダルフール地方の紛争による被害が最も大きい地域では、援助ニーズに基づいた独立した活動は、事実上不可能な状態が続いた。MSFが数十万人の国内避難民に届けていた援助は、スーダン政府から課される手続き上の障害によって阻まれた。
  • パレスチナ:医療活動地への立ち入りが禁止に
    2008年末にイスラエル軍が攻撃を開始したとき、MSFはすでにガザ地区で活動を行っていた。しかし、毎日のように繰り返される砲撃のため、ほぼ屋内に閉じ込められた状態となった。一方、ガザ地区の外で待機するMSFの医療スタッフはガザ地区への入域許可を何度も求めたが、この時点でイスラエルの許可が下りることはなかった。
  • ニジェール:緊急治療プログラムの停止と一部再開
    MSFは栄養治療を中心とした緊急治療プログラムを8年間にわたって継続してきたが、ニジェール当局はこれを一時停止すると表明。MSFは2ヵ月間の交渉の後に、活動を一部再開することができた。
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10の最も深刻な人道的危機 2008年

一部の緊急事態はメディアで大きく取り上げられるが、それよりもはるかに多くの紛争、暴力、そして絶望的な人道的危機がニュースに取り上げられないままとなっている。あるいは、取り上げられたとしても、当初の関心が次第に薄れる中、現地の悲惨な事態は延々と続いている。本活動報告書では、報道されることの少ない、しかし深刻な影響をもたらしている人道的危機を紹介する。

ブルキナファソでは、2007年9月のMSF栄養失調治療プログラム開始以来、2万人以上の子どもが治療を受け、治癒率は88%にのぼる。08年9月のピーク時には、毎週600人もの子どもを診療所に受け入れた。
ブルキナファソでは、2007年9月のMS
F栄養失調治療プログラム開始以来、
2万人以上の子どもが治療を受け、治
癒率は88%にのぼる。08年9月のピー
ク時には、毎週600人もの子どもを診
療所に受け入れた。
  1. イラク:
    攻撃の的となる援助と人材不足で阻まれる医療援助
  2. エチオピア:
    戦闘が人道援助を遮断  ―ソマリ州の栄養危機、衛生状況も悪化
  3. コンゴ民主共和国:
    東部で戦闘が激化 ―続く避難生活に疲弊する人びと
  4. ジンバブエ:
    インフレ率2億3100万% ―続く医療危機と暴力による混乱
  5. スーダン:
    ダルフール地方と南部地域の避難民 ―終わりの見えない暴力による苦難
  6. ソマリア:
    壊滅的人道状況に追い打ち ―過去10年間で最悪の戦闘激化
  7. パキスタン:
    北西部の武力衝突激化 ―テロ、空爆、銃撃に追われる一般市民
  8. ミャンマー:
    大災害への注目の陰で依然放置される医療上の危機
  9. HIV/結核:
    増加する二重感染患者に不足する対策
  10. 子どもの栄養失調:
    進歩する栄養治療 ―それでも放置される数百万人の子どもたち

各国ごとの詳しい内容はこちら↓
http://www.msf.or.jp/special/Top10_2008/

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MSFがプログラムを実施した国(62の国と地域、アルファベット順)

2008年、日本支部からは20ヵ国でのプログラムに資金が提供されました。各国をクリックすると詳細ページが表示されます。

アルメニア バングラデシュ ベルギー ボリビア ブラジル ブルキナファソ
ブルンジ カンボジア カメルーン 中央アフリカ
共和国
チャド 中国
コロンビア コンゴ
民主共和国
エチオピア フランス グルジア ギリシャ
グアテマラ ギニアビサウ ギニア ハイチ ホンジュラス インド
インドネシア イラン イラク イタリア ケニア キルギス
レバノン レソト リベリア マラウイ マリ マルタ
モルドバ モロッコ モザンビーク ミャンマー ネパール ニジェール
ナイジェリア パキスタン パレスチナ
自治区
パプア
ニューギニア
フィリピン ロシア連邦
シエラレオネ ソマリア 南アフリカ
共和国
スリランカ スーダン スワジランド
スイス タイ トルクメニスタン ウガンダ ウズベキスタン イエメン
ザンビア ジンバブエ
HIV/エイズの被害が最も深刻な10ヵ国の一つ、アフリカ南部のマラウイ。保健省とMSFは抗レトロウイルス薬(ARV)の治療を妥当な費用で患者に提供している。
HIV/エイズの被害が最も深刻な10ヵ国の一
つ、アフリカ南部のマラウイ。保健省とMSF
は抗レトロウイルス薬(ARV)の治療を妥当な
費用で患者に提供している。

活動終了時期の決断

2008年、MSFはコンゴ共和国、コートジボワール、ラオスにおける活動をすべて終了した。

MSFの緊急医療・人道援助団体としての役割は、緊急事態発生時に最も弱い立場におかれた人びとに援助を行うことであり、永続的な支援体制に取って代わるものではない。プログラムを終了し、現地を離れる、あるいはプログラムを現地当局に移管するための決断は、MSFの活動がなおも必要とされているか否か、どのような状況下でもスタッフの安全が確保されているか否かについての徹底した分析に基づいて行われる。

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主な財務データ

1971年の設立以来、MSFは資金の大部分を一般の人びとからの寄付に依り、政治的、宗教的、経済的、その他すべての組織や権力からの徹底した独立を貫いている。

大陸別活動費割合
収入
支出
活動費支出項目別割合


サイクロン「ナルギス」がミャンマーを襲ったのち、援助に入ったMSFのロジスティシャン。MSFの緊急医療支援活動は、民間からの寄付と一貫した独立体制が礎となっている。

サイクロン「ナルギス」がミャンマーを襲ったのち、援助に入ったMSFのロジスティシャン。MSFの緊急医療支援活動は、民間からの寄付と一貫した独立体制が礎となっている。