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国境なき医師団(MSF) 2007年度アクティビティ・レポート - 要旨

概略

国境なき医師団(MSF)は2007年度、世界62ヵ国で合計844万7106件の外来診察と34万689件の入院治療を行った。

MSFは全世界の4大陸で活動を展開した。特にアフリカでほとんどのプログラムを実施し、これにアジア、中南米、ヨーロッパ、中東が続く。人道・医療危機の最大の原因は武力紛争であり、次いで挙げられるのが感染症や風土病の発生であった。

MSFは世界で最も致死率の高い病気の患者多数を治療した。

  • 髄膜炎の予防接種を250万人に実施し、1万800人以上の患者を治療
  • マラリア患者130万人を治療
  • はしかの予防接種を43万人に実施
  • HIV/エイズの抗レトロウイルス (ARV) 薬治療を11万2千人に実施
  • コレラ患者4万3千人を治療
  • 最も重症の多剤耐性結核(MDR-TB)患者640人を含む、結核患者2万9千人を治療
  • 免疫系を冒す病気である内臓リーシュマニア症の患者4200人を治療
  • アフリカトリパノソーマ症(アフリカ睡眠病)の患者1700人を治療
  • シャーガス病の患者685人を治療
2007年度アクティビティ・レポートを見る(英文、PDFファイル、88ページ 3.1MB)PDFファイルが開きます
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1年の総括

(クリストフ・フルニエ、MSFインターナショナル会長)

MSFインターナショナル会長のクリストフ・フルニエは、「1年を振り返って」と題する論説記事の中で、MSFが2007年度に世界で最も脆弱で顧みられない人びとを対象に実施した緊急医療・人道援助活動を解説している。MSFは緊急の援助ニーズがある場所で、多くの難民や困難な状況におかれた人びとのために活動を行っているが、次第に診察件数の大半を占める女性と子どもへの援助にシフトしつつあるとも説明している。フルニエ会長による所見の要約は以下の通りである:

女性と子ども

女性は感染症や伝染性の病気の危険に晒されていることに加えて、妊娠中および出産時に特に病気にかかりやすい。また伝統的に医療ケアを受ける機会が少ないため、自分の健康に関する不安を他者に伝える機会も比較的少ない。子どもは、出生時および生後数日間を生き延びることができても、多くの国で病気、虐待、栄養失調の危険にさらされる傾向にある。

MSFは現在、女性と子どもという重要な人口層を対象に、その罹患率や死亡率に影響する肺炎球菌、ロタウイルス、はしか、髄膜炎、マラリア、HIVなどの主な病気への対処に重点的に取り組んでいる。従来型のワクチンや治療に加えて、2009年から一般利用が可能となる見込みの髄膜炎用の共役ワクチンなど、新しいワクチンの導入も始めつつある。

妊婦の死亡率

2007年度にMSFは50万件を超える産前ケアの診察を実施し、約10万件の分娩を取り扱った。しかし、MSFが活動を行っている大多数の国々において妊娠・出産は女性の死因の4分の1を占めており、妊婦死亡率は依然として大きな懸案事項である。合併症がある場合でもない限り、産前・産後ケアを受けるために診療所を訪れる女性はほとんどおらず、出産に際してはさらに少ない。合併症のために診療所に来た時には既に手遅れという場合もある。このため、妊婦への働きかけが大きな課題となっている。MSFは現在、産前・分娩時・産後のケアに関する認識をさらに高めるための方法を探り、また身体に最も深刻な障害と傷痕を残す産後合併症のひとつである膀胱腔瘻に冒された女性への外科治療を拡大しようとしている。

家族計画

家族計画の普及は、MSFが力を注ぐもうひとつの分野である。MSFは家族計画に関する活動を拡大・強化し、産後ケア、栄養治療プログラム、HIV/エイズの予防・治療活動も同時に盛り込んで、すべての女性がこれらのサービスを利用できるようにすることを目指している。

さらなる進歩のための前提条件

安価で良質な医薬品を入手することは、依然としてMSFの優先事項である。2007年に、ノバルティス社によるインド特許法に対する異議申し立てを却下する判決が下されたことで、MSFは今後もインドを患者に対する医薬品の供給国として頼りにすることができるようになった。MSFは世界保健機関(WHO)レベルでの討議にも参加した。この討議の目的は、研究開発費用を医薬品の価格から切り離し、貧困国における基本的医療ニーズに関する研究への資金供給方法を変更することであった。

紛争地域へのアクセスに関する課題

紛争地域にいる一般市民の犠牲者のもとに赴くことは、MSFにとって依然として大きな課題のひとつとなっている。実際、MSFは交戦中の政府や党派から歓迎されることはほとんどなく、頻繁に活動を妨害され、スタッフは脅迫を受ける。外国人派遣スタッフ、現地スタッフともに任務の遂行中に誘拐や暴行の被害に遭っており、殺害されたケースもある。

2007年度中も複数の紛争地域において引き続き援助活動が困難な状況に直面した。代表的な地域は以下の通りである:

  • ソマリア - 暴力から逃れてきた人びとに対する援助活動が意図的に標的とされ、3人のスタッフが誘拐・殺害された。
  • スーダン・ダルフール地方 - 車列が襲撃され、備蓄物資が強奪された。
  • エチオピア - 現地の避難民に対する援助活動の実施を繰り返し試みたが、拒否された。
  • アフガニスタン - 2004年に5人のスタッフが殺害されたことを受けて撤退したが、最も弱い立場にある人びとに対する援助を行うために活動を再開する可能性もある。

「MSFは目的を貫きます。なぜならこれはMSFが自ら課した任務だからです。しかし活動する環境の実態に即して考えると、MSFの活動、その活動の認識および正当性が、明確かつ普遍的に認められているとは全く考えられません。」
MSFインターナショナル会長、クリストフ・フルニエ医師

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説明責任:MSFの考え方

(クリストファー・ストークス、MSFインターナショナル事務局長)

2007年度国際活動報告書は、より説明責任を果たせる団体となるためのMSFの努力についても詳述している。

MSFインターナショナルの事務局長であるクリストファー・ストークスは、論説記事の中で、MSFは人道援助団体が自ら行う活動について説明する責任を強化する傾向が高まっていることを歓迎すると述べている。しかし、導入される措置が各団体にとって適切で妥当なものとなるように慎重かつ現実的なアプローチをとるべきだとも主張している。

MSFは、活動成果の評価を行い、今後の活動の改善に役立てることが、ひとつの主要な説明責任であると考えている。たとえば、MSFはマラリアおよびHIVに関する先駆的な援助活動を行い、その事例報告を出版した結果、いくつかの国では国家的な医療の重点分野や手順が変更され、それまで顧みられていなかった患者が恩恵を受ける結果となった。

MSFは、評価は活動の妥当性、有効性、効率性という3つの基準と、それらの活動が社会に与えるより広範な影響とに基づいて行われるべきだと考えている。しかし、説明責任への取り組みを深めるにあたっては、不安定で治安の悪い環境の中で活動していることを考慮しなければならない。緊急の援助ニーズに即時に対応するためには、危険を冒す必要が必然的に生じ、そしてMSF自身としても、活動に本質的に内在する限界、挑戦、ジレンマを認識する必要がある。

最後に、MSFは評価を、MSFによる対応を変更・改善するための継続的な学習過程と見なしている。2006年にアンゴラで発生したコレラの流行に際しての事例が代表的な例である。複数の要因によってこの緊急事態に対する対応が遅れ、通常は予防活動と治療活動を組み合わせて行うところを、治療活動しか実施することができなかった。全症例の80%にあたる4万人を治療したとはいえ、MSFはこの教訓を今後の活動に生かすためにこのプログラムに対する完全な評価を行った。

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MSFが活動を行う理由

(エマニュエル・トロン、MSFインターナショナル ポリシー&アドボカシー・コーディネーター)
この記事の日本語訳はこちら

この論説記事は、MSFが武力紛争、風土病や伝染性疾患、社会的暴力や医療からの疎外、自然災害のうち少なくともいずれかが発生した国で人びとの命を救い、あるいは苦痛を和らげるために援助を行う理由を概説している。MSFは援助の提供の限界を認識しており、あらゆる状況において、自分たちの経験と判断を駆使してMSFの存在が必要とされているか否かを判断する。

■武力紛争
MSFは、栄養失調や心の傷の問題など、紛争に付随する医療面の危機に対応するために医療機関や病院で活動している。例えば2007年には、中央アフリカ共和国での暴力から逃れてきた9万人の人びとに対して、チャドの難民キャンプで医療・人道援助を提供した。

■風土病/伝染性疾患
MSFは女性と子どもをはじめとする弱い立場におかれた人びとに対して、コレラ、はしか、マラリアなどの治療と予防活動を行う。流行に素早く対応するため、現地政府や当局と協力して活動する。例えば2007年には、シエラレオネにおいてマラリア患者10万人を治療した。

■社会的暴力/医療からの疎外
少数民族から亡命希望者、HIV/エイズまたは結核の患者まで、社会の中で多くのグループが常に暴力の標的となり、あるいは適切な医療を受けられない状況にある。MSFは医療・心理ケアおよび社会的活動により、これらの人びとの日常的な苦痛を軽減している。例えば2007年には、ホンジュラスのセンターで400人のストリートチルドレンに対して医療その他の援助を提供した。

■自然災害
自然災害という難局においては即時の医療・人道対応が必要となる。MSFは外科処置、心理ケア、栄養治療プログラムなどの医療援助と、感染症のリスクに対処するための予防活動を行う。例えば2007年には、インドネシアのスマトラ島西部を襲った地震への緊急対応の一環として、5110件の診察を行い、毛布4万3600枚と衛生キット2万2千個を配布した。

活動終了の決断

現地での活動を終了する、またはプログラムを他に引き継ぐという決断は、決して軽々しく下せるものではない。MSFの存在と活動がまだ必要とされているか、妥当であるかについて、そしてスタッフの安全確保についての徹底分析に基づいて決定する。

ある国での活動を終えることには、極度の危機的状況に瀕する最も弱い立場におかれた人びとを救うために存在する緊急医療・人道援助団体であるMSFの任務の特殊性が反映されている。MSFの活動や存在には限界があること、代わりが利くものであり、より永続的な解決策に取って代わることを目的とするものではないことを認識した上で、活動を終了する。

2007年度にMSFはアンゴラ、べナン、エクアドル、日本、マレーシア、ルワンダにおけるプログラムを終了した。

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2007年 10の最も報じられなかった人道的危機

特定の緊急事態がメディアで大々的に取り上げられ、その結果世間の注目を集める一方で、数多くの紛争、暴力、そして人びとが絶望的に援助を求めている状況の大部分が報告されていない、または当初の関心が失われた後も依然として続いている。2007年度の国際活動報告書は、昨年度における10の最も報じられなかった人道的危機、およびMSFが行った対応を明らかにしている。

ソマリア、ジンバブエ、結核治療、そのまま食べられる栄養治療食(RUF)、スリランカ、コンゴ民主共和国、コロンビア、ミャンマー、中央アフリカ共和国、チェチェン共和国

2007年 10の最も報じられなかった人道的危機の特集ページはこちら新しいウィンドウが開きます

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数字で見るMSF

■プログラム実施地域
アフリカ:67.2%、アジア:21%、中南米:7.5%、ヨーロッパ:4.3%

■援助活動の背景
安定した状況:44%、武力紛争:29%、内政不安:17%、紛争後:10%

■援助開始のきっかけとなった出来事
武力紛争:43%、風土病/伝染性疾患:34%、社会的暴力、医療からの疎外:15%、自然災害:6%

■主な活動
外来診療件数:844万7106件
入院治療件数:34万689件
治療したマラリア患者の数:120万1358人
HIV患者の登録件数:16万6481人
はしかの予防接種実施数:42万9996人
髄膜炎の予防接種実施数:249万8241人
治療した結核患者の数:2万9千人

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MSFがプログラムを実施している国 (62の国と地域)

アルメニア、バングラデシュ、ベルギー、ボリビア、ブラジル、ブルキナファソ、ブルンジ、カンボジア、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、中国、コロンビア、コンゴ民主共和国、エチオピア、フランス、グルジア、グアテマラ、ギニア、ハイチ、ホンジュラス、インド、インドネシア、イラン、イラク、イタリア、コートジボワール、ケニア、キルギスタン、ラオス、レソト、リベリア、マラウイ、マリ、モルドバ、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ニジェール、ナイジェリア、パキスタン、パレスチナ自治区、パプアニューギニア、ペルー、コンゴ共和国、ロシア連邦、ルワンダ、シエラレオネ、ソマリア、南アフリカ、スリランカ、スーダン(ダルフール地方を含む)、スワジランド、スイス、タイ、トルクメニスタン、ウガンダ、ウズベキスタン、イエメン、ザンビア、ジンバブエ

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主な財務データ

■収入(百万ユーロ、括弧内は百万円単位。1ユーロ=170円で計算)

個人寄付金収入 518.7 (88,179)
公的機関 54.2 (9,214)
その他 19.8 (3,366)
収入合計: 592.7 (100,759)

■支出(百万ユーロ、括弧内は百万円単位。1ユーロ=170円で計算)

救援活動費 439.1 (74,647)
証言活動費 19.4 (3,298)
その他の人道援助活動費 9.1 (1,547)
活動費合計 467.6 (79,492)
募金活動費 76.9 (13,073)
一般管理費 32.9 (5,593)
支出合計 577.4 (98,158)
次期繰越金 12.1 (2,057)

■大陸別活動費

アフリカ 72%
アジア 17%
中南米 7%
ヨーロッパ、中東 3%
未配分 1%

たった3,000円で100人をこえる命を救える


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