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「成功を無にしてはならない」─HIV/エイズ対策への資金援助に後退の危機

国境なき医師団(MSF)は10年前、南アフリカ共和国とタイでHIV/エイズの治療を先駆的に始めた。いまでは何百万人もの命が救われ、治療を受けている人びとは、より長く生き、よりよい生活を送ることができる。2009年末現在、MSFは抗レトロウイルス薬(ARV)治療を、27ヵ国の16万人以上に対して行っている。南アフリカ共和国のカエリチャ地区だけでも、1万3550人以上の人びとが、MSFと地元当局が協力して行っているHIV治療の恩恵を受けている。

HIV/エイズの抗レトロウイルス薬(ARV)治療を受けるHIV患者は、健康を保つために厳密な服薬スケジュールを守る必要がある。
HIV/エイズの抗レトロウイルス薬(ARV)治療を受けるHIV患者は、
健康を保つために厳密な服薬スケジュールを守る必要がある。


資金援助からの撤退は、緊迫した状態を招く恐れがある

この取り組みがいま、危機にさらされている。国際的な資金拠出機関がHIV/エイズの資金援助に上限額を設定したり、削減したり、資金援助活動から撤退するかもしれないという憂慮すべき兆候があるからだ。世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)は、途上国におけるHIV/エイズ治療費のおよそ3分の2を援助しているが、現在、資金が大きく不足する問題に直面している。だれもがHIV治療を受けることができるように、資金援助や支援をするという約束を、資金拠出機関が守らなくなっているのだ。世界的なHIV/エイズ流行と闘うための、米国の主要な取り組みである米国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)は、2009年と2010年の抗レトロウイルス薬(ARV)購入予算の削減と、HIV/エイズ全体の予算凍結を決めた。また、別の資金拠出機関である国際医薬品購入ファシリティ(UNITAID)や世界銀行などは、コンゴ民主共和国(以下、「コンゴ」)、マラウイ、モザンビーク、ウガンダ、ジンバブエでのARVへの資金援助を、今後数年間削減することを発表している。

このような状況のもと、財源の上限額設定や、治療を開始する人数の制限を迫られたりする国もある。たとえば、南アフリカ共和国、ウガンダ、コンゴでは、新規に治療を受けることのできる患者数が6分の1に減らされた。もともと脆弱な医療体制が、さらに集中的な治療を必要とする患者の増加によって、ますます緊迫した状態になると予想される。すなわち、医療機関で治療を受けられない患者が増加し、医師も、あたかも10年前に逆戻りしたかのように、HIV治療薬を配給制にすることを強いられるのだ。また、世界保健機関(WHO)は、よりよい薬を用いる治療の早期開始を新たに推奨しているが、それも実施できなくなる恐れが出てきた。

必須医薬品キャンペーンを通じて事態の改善を図る

MSFの必須医薬品キャンペーンは、医療、科学、政策担当のそれぞれの専門家がチームを組み、MSFスタッフが現場で直面する医療問題の解決方法を探り、手助けをしていくものである。現在、同キャンペーンは他の医療活動者とも協力しており、国際社会がHIV/エイズ対策のための約束を守るように呼びかけるとともに、大胆かつ革新的な方法で、薬価が手に届く範囲に収まるようにする努力を支えている。

また、MSFは各国に対して、国際貿易協定を合理的かつ柔軟に運用し、医薬品特許によって医療が困難にならないようにするとともに、競争を通じて安価なジェネリック医薬品(後発医薬品)の開発を促進するよう呼びかけている。MSFは、製薬会社にUNITAIDのHIV/エイズ薬の特許プールに参加するよう働きかけ、新しい薬についても安価な後発医薬品が早い時期に使えるようになるよう図っている。

私たちはいま、HIV/エイズ治療にとって非常に重要な時期にあり、後戻りするわけにはいかない。HIV/エイズは、いまでも緊急事態のままであるからだ。成し遂げられたことも多いが、いまだに900万人もの人びとが必要な薬を手に入れられないでいる。資金拠出機関と各国政府が、これまでに成し遂げてきたことを無に帰することは許容されることではなく、私たちは命にかかわるこの病気を抑制するため、資金援助の継続と増額に取り組み、後戻りするのではなく、前進しなければならない。


医薬品の利用、医療の革新に関する必須医薬品キャンペーンの詳しい情報については、「MSF - Campaign for access to essential medicines」(英語)をご覧ください。

※日本公式サイトの「必須医薬品キャンペーン」もご参照ください。



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