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タイ

活動の背景:風土病/伝染性疾患、社会的暴力/医療からの疎外
活動スタッフ:161人

国境なき医師団(MSF)は2000年に、タイで初となるHIV/エイズ患者に対する抗レトロウイルス薬(ARV)治療を、ジェネリック薬を用いて開始した。これ以降、MSFは現地保健当局や提携機関と密接に協力して、HIV/エイズ患者の支援や治療の改善に取り組んできた。2007年7月までに、10万人が国の医療制度を通じてARVの第一選択薬による治療を無償で受けている。これは主にタイ国内でジェネリック薬が生産されているおかげで可能となっている。社会的に弱い立場の人びとが医療から除外されている点、また第一選択薬が効かなくなった患者に必要な第二選択薬のニーズが急増していることへの対応は、大きな試練である。MSFの必須医薬品キャンペーンは、ARVのジェネリック薬の製造の拡大や、現地保健省がHIV/エイズのジェネリック薬に対して強制実施権を発動することを支持している。

MSFは、タイ北東部のカラシン県でクチナライ地域病院や地域団体と連携し、抗レトロウイルス薬(ARV)による治療の強化と維持のため、患者のHIVウイルス量のモニタリングと地域社会での活動を続けている。2007年7月までに180人がARVの第一選択薬を、5人がARVの第二選択薬の投与を受けた。この試験的なプログラムは、地方行政レベルでARVの第二選択薬による治療が提供されている唯一の例である。

移民や少数民族への医療ケアの提供

タイでは、医療保険を利用できるのは登録したタイ国民のみで、社会から取り残された人びとへの医療ケアは制限されている。MSFはこのような人びとの健康上の懸念を表明し、タイ当局にこれらのニーズに対応するよう働きかけてきた。

MSFは2005年から、タイ北部のペッチャブン県にあるファイ・ナム・カオ村のキャンプでラオスのモン族への援助を行い、適切な医療ケアや水の提供、キャンプ内の衛生状態の確保を行っている。2006年には2万4千人以上の診療を行い、その主な症状は呼吸器感染症と下痢であった。MSFはキャンプの指導者や保健当局と連携し、人口過密なキャンプ内で感染症が発生する危険性があることを指摘した。2007年6月下旬には、7千9百人の難民がより大きなキャンプに移された。MSFは家族離散を防ぐ取り組みと共に、医療ケアと食糧配給を実施した。

現在、タイ政府はモン族の難民が入国した際、国外へ強制送還している。MSFはタイ政府に対してモン族の強制送還を中止し、彼らの身の安全を確保するよう要求している。また、国際社会に対しても、モン族難民の状況に明確な態度をとるよう要請している。

MSFは1999年にタイとミャンマーの国境にあるメーソートで、ミャンマーからの不法移民に対する結核治療プログラムを開始した。2006年、保健省は多剤耐性結核(MDR-TB)の治療薬の輸入を許可した。2005年から2006年の間に結核の治療を受けた患者数は倍増し、合計で799人に上り、その7割が治療を完了した。

2007年半ばには、ミャンマーの自治州である新モン州でマラリア治療プログラムを開始し、早期診断と治療を行った。カンチャナブリ郡のサンクラブリを拠点とするチームが、タイ・ミャンマー国境沿いの停戦区域内にあるモン州の医療施設を支援し、医薬品や研究器具の提供、スタッフの指導を実施した。

また、タイとラオスの国境に位置するチャンライ州のチェンセーンとメーサイの病院を拠点に、ミャンマーやラオスからの不法移民に対して国境を越えてHIV/エイズ治療を提供した。この他、ラオス人患者が自国内で診療を受けられるよう、ラオス国内の3つの病院の収容能力も強化した。

バンガーでは、未だにミャンマーから何千人もの不法移民が、職を求めてタイの国境を越えてくる。言葉の壁や逮捕への恐怖、情報の不足などにより、彼らは必要な医療を受けられないでいる。MSFは移動診療や診療所、ミャンマー語を話す医療スタッフを通じて、母子保健やHIV/エイズを含む感染症の治療などの基礎医療を提供している。2006年には、バンガーで3千百人の外来患者を診察した。

MSFの活動はタイ南部のイスラム社会では限られているが、これは現在も続いている暴力行為や、政府やイスラム社会が抱く外部の人間に対する一般的な不信感によるものである。MSFはエイズに関する意識を高めるべくHIV/エイズの教育活動を実施し、地域での活動を継続している。

静脈注射による麻薬常習者や囚人に医療を提供

静脈注射による麻薬常習者は、タイ国内でHIV/エイズ感染の危険性が最も高いグループに属する。彼らの多くは差別に苦しみ、適切な医療を受けることができない。MSFは週に1度、2か所の麻薬常習者センターで一般診療とHIV/エイズなどの感染症の治療を行っている。治療を受ける患者を手助けし、服薬の遵守と新たな合併症の発生がないかどうかを観察している。

MSFはまた、タイ政府と協力してバンコク市内の2ヵ所の刑務所でHIV/エイズの予防と治療も提供している。タイの刑務所はHIV感染率が高く、医療従事者の不足と財政の不足に苦しんでいる。MSFが2003年にプログラムを開始して以来、67人がARV治療を受けている。MSFの活動には、日和見感染症の治療、刑務所の医療従事者の指導、検査費用の負担などがある。将来これらの業務が国内の全ての刑務所で行われるように、MSFは政府の更正局と連携して指導カリキュラムを作成中である。

MSFは1983年からタイでの活動を行っている。