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MSFが活動を行う理由

エマニュエル・トロン

人道的活動の目的は、まず何よりも人びとの命を救い、深刻な苦しみを和らげ、生命が脅かされている人びとを助けることである。MSFが活動する各国では、以下にあげる4つの状況のうち1つ以上が起こっているため、困窮した人びとを救うための医療・人道援助や彼らの置かれた現状を訴える行為が必要とされている。

以下の分類は、現実を単純化あるいは機械的にとらえたり、MSFがやみくもに、又は系統的に活動を行っていることを示すものではない。援助を届ける活動には限界があるため、MSFはすべての人的災害や自然災害に対応することはできない。MSFの活動はすべて、潜在的な付加価値の分析を反映したものであり、日々おかれた状況の中で私たちが活動を行うことが、もしくは行わないことが適切であるかを常に問いつつ活動を行っている。

武力紛争

武力紛争の被害者には、包括的な医療・人道援助が必要である。彼らは暴力の犠牲者であり、襲撃や性的暴行、殺人に直接的あるいは間接的に苦しんできた一般市民である。被害者たちは、衰弱し、紛争の道具として利用されている。さらに、家を強制的に退去させられ、国内もしくは国外に避難する場合もある。

医療システムが破壊、もしくは崩壊している状況下では、内科、外科、心理ケアなど日常的な援助が必要である。苦しみは、インフラ基盤の崩壊や壊滅した経済など、紛争や不安定な状況下での間接的な影響からも生じる。一般市民は事実上、必須の医療サービスから除外され、HIV/エイズや結核、マラリアといった感染症や、睡眠病などのまだあまり知られていない病気に感染する危険がある。

MSFの活動は、医療施設や病院で活動する医療チームを中心とした医療ケアの提供であるが、さらに栄養失調や心理ケアなど紛争に付随する健康上の問題にも対応している。加えて、必要とあれば井戸を設置し、清潔な飲料水を配給し、避難所を作るための物資の提供も行っている。

風土病/伝染性疾患

風土病や伝染性疾患は、紛争の発生地や政情の安定している国など様々な状況下で発生する。

複雑な環境下では、緊急時の対応と革新的な医療活動が不可欠である。感染者は政情が不安定な地域や遠隔地や未開発地域、首都や都市近郊、避難民キャンプやスラム街に住んでおり、地方当局や国際機関から十分な支援を受けていない。彼らの多くは少数民族であるか避難民、もしくは遊牧民である。経済的、社会的な自立が難しい人びと、あるいは独立しているが生活基盤がもろい人々は、感染のリスクがより高い。中でも女性や子どもへの感染は最大の懸念事項である。これらの人びとは感染症にさらされているだけでなく、女性は妊娠すると免疫システムが低下してしまう。加えて、女性は痛みや不安をあらわにする機会が伝統的に制限されているため、こうした女性の現実は、多くの国で気付かれないままとなっている。また、幼児や子どもは社会的に依存状態にあることも感染へのリスクを高くする。

MSFは既存の医療機関で活動を行うほか、必要に応じて新たな医療施設の開設も行う。感染症の危険性について意識を高める活動や予防活動は不可欠である。地方当局や関係省庁との連携は、活動を遂行し状況を早急に改善するために必須である。また、HIV/エイズの事例でも明らかなように、医療活動を支援するためのアドボカシーを行うことは、問題の責任の所在を明確にし、政治的意図を理解し、効果的な解決策を引き出すために不可欠である。

社会的暴力と医療からの疎外

社会的暴力を受け、医療ケアから疎外された人びとは、集団としての帰属や集団共通の特性に苦しんでいる。すなわち彼らは少数派であり、少数民族の人びとであり、難民あるいは避難民である。特に危険な状況にあるのは、ストリートチルドレンやナイト・コミューター(襲撃や誘拐を恐れて夜間だけ安全な場所に避難する子どもたち)である。こうした人びとは囚人、あるいは失業者として社会から疎外され、麻薬中毒者や精神病患者として医療からも疎外されている。彼らはまた、性産業に従事していたり、HIV/エイズもしくは結核などの患者である場合もある。

彼らは、環境や権利が制限された、または存在しない状況下で暮らしているために、地方当局からの十分な支援を期待することはできず、また国際的な援助も限られている。

被害者の日常的な苦しみを緩和しようと、MSFは医療ケア、心理ケア、社会的活動を通じて直接援助を行っている。医療からの疎外に関しては、医療へのアクセスについて、また医療サービスが行われていないことについて注意を喚起する必要がある。証言活動はMSFのアイデンティティのひとつでもある。患者のケアに加えて証言活動を行うことで、苦しみの原因や、効果的な援助を提供する上で何が障害となっているのかについての注意を呼び起こし、患者を取り巻く現状を国内外の関連機関に訴えることを目指している。

自然災害

自然災害の被災者は、緊急の医療・人道援助を必要とする。被災者は、家や財産、家族や親戚を突如失い、絶望的な状況にある。重度のトラウマを抱え、迅速で多様な医療支援や社会的支援を必要としている。被災地や被災者へのアクセスは多くの場合困難で、多様なニーズを迅速に把握することも求められる。不安定な居住環境で生活していることから、最貧困層が特に災害の影響を受けやすい。MSFは、被災者に対し幅広い援助を行っている。外科・心理社会的な医療援助や、栄養治療プログラムなどを既存の病院施設や仮設の施設で提供し、また感染症の危険性を呼びかける予防活動なども行っている。必要なときには、毛布やテント、調理用油などの援助物資を配布することもある。これらの活動は、被災国の援助従事者と緊密に協力し、彼らの取り組みとのバランスを図り、国際的な援助の時間・量的な制約や、直接的な関係性を考慮した上で展開される。

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