ケニア
活動の背景:武力衝突、風土病/伝染性疾患、自然災害
活動スタッフ:517人

国境なき医師団(MSF)はケニアにおいて、HIV/エイズ患者の治療に主な焦点を当てている。ナイロビのスラム地区やブシアとホマベイの地方部におけるプログラムでは1万2千人以上の患者に抗レトロウイルス薬(ARV)治療を提供している。また、増加しつつある薬剤耐性結核への取り組みも深めている。
MSFは1996年にケニアの西部、ニャンザ州に位置するホマベイで、ケニアで初のHIV/エイズ治療プログラムを開始した。人口が密集しているヴィクトリア湖畔はHIV感染率が約35%と、国内で最もエイズ流行の影響を受けている地域のひとつである。当初は結核治療および医療施設を通じてHIV感染を減少させることに焦点を当てていたが、2001年に初めて無料のARV治療を導入した。
2007年7月時点では4741人が治療を受けており、そのうちARV治療を受けているのは3567人であった。MSFとケニア保健省は活動を統合することを計画しており、HIVの治療施設をホマベイ周辺にさらに3ヵ所開設するため、患者数は増え続けるであろう。また、結核とHIVに二重感染している人びとへの包括的サービスの試みに対し、MSFは国内で第三の結核菌培養研究所の立ち上げなど、医薬品や技術面での援助を提供している。
ケニアとウガンダの国境に位置するブシア県では、MSFは主な地域病院や地方部の診療所9ヵ所において、HIV/エイズ治療プログラムを運営している。これらの施設での臨床サービスに加え、プログラムでは140人以上のボランティアの地域保健員を起用し、HIV/エイズ患者や地域の人びとを対象にした情報・教育プログラムを行いながら、在宅ケア方式を提供している。推定では、ブシア県では1万人以上が緊急に治療を必要としている。このプログラムでは2003年7月にARV治療の提供を開始し、子ども140人を含む1850人を治療している。
2007年にMSFはARV治療施設3ヵ所を他団体に引き継ぎ、ブシア県で最も遠隔であり、HIV感染率が最も高い地域での治療へのアクセスを改善し、母子感染防止を向上させるために保健省が新たに2ヵ所の治療施設を設置する支援を行っている。
ケニアの首都ナイロビにおいても、MSFはムバガシ地域病院で包括的なHIV/エイズ治療を提供している。2005年初めにMSFが病院敷地内に診療所を設置したことにより、MSFと保健省のHIV/エイズ治療を包括的に統合することができている。現在3314人以上がARV治療を受けており、さらに811人が治療を受ける予定である。MSFは、このプログラムを段階的に保健省に引き継いでいる。

無秩序に広がるナイロビのスラム地区、キベラにあるムバガシ地域病院と密接に連携しながら、MSFは3つの診療所でHIV/エイズと結核の治療を一次医療サービスに統合するプログラムを運営している。このプログラムでは、HIVと共に生きる人びとや共同体に権限を委譲することに焦点を当てている。ムバガシ病院と60万以上の人口を抱えたスラム地区をカバーしながら、2006年から2007年にかけてMSFは4474人にARV治療を行い、約10万3千件の診察を行った。またナイロビ東部の郊外にある人口30万以上の第二のスラム地区マサレでは、MSFはホテルだった建物を改装した「ブルーハウス」と呼ばれる施設でプログラムを運営している。このプログラムではHIV/エイズの包括的治療を無料で提供しており、結核との二重感染率が約70%であることから、結核患者の治療も行っている。2006年末には、抗結核薬の第一選択薬では治療できない、増加しつつある多剤耐性結核(MDR-TB)に感染している患者を治療するために診療所を拡張した。病気の拡大に打って付けの環境条件が揃っているスラム地区において、MDR-TBの感染者数は増加し続けている。約2751人のHIV/エイズ患者が治療を受けており、診療所では月に約300人のHIV検査を行っている。またMSFは、多数の患者に主要な栄養補助食品を支給し健康面の支援も行っている。
カチェリバにおける新規プログラム
2006年末に、MSFはケニアの西ポコット地域にある小さな町であるカチェリバで、サンスクリット語で「黒い熱」を意味する「カラアザール」として知られる内臓リーシュマニア症を治療する新しいプログラムを開始した。内臓リーシュマニア症は、主に、孤立した地域の貧しい共同体に影響を及ぼす寄生虫病で、しばしば強力な感染症となる。
洪水、熱病、難民の援助ニーズ
MSFは、ケニアで起きる緊急事態への対応を続けている。2006年末には、国境地域のダダーブにあるソマリア人難民キャンプを襲った洪水に対応し、住民や難民に医療ケアを提供した。
2007年初めにはリフトバレー熱ウイルスの発生に対応し、4月にはケニア西部にあるマウント・エルゴン県の山岳地帯で発生した敵対する2つの氏族の衝突の後、境界線の両側に診療所を設置した。
MSFは1987年からケニアで活動を行っている。














