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ケニア

外国人派遣スタッフ 42人
現地スタッフ 399人

2006年初めの数ヵ月間に、過去3回の雨季における雨量不足のために、ケニア北部の主に牧畜を生業にしている住民の命は深刻な危機にさらされた。栄養失調に陥る子どもが増え始め、国境なき医師団(MSF)は北東部のエルワクで栄養治療プログラムを開始した。これまでに重度の急性栄養失調になった500人以上の子どもを治療し、1万9千人に対してはしかの予防接種を行った。また、緊急の水不足に応えて、MSFはこの地方の5地域に数十万リットルの水をトラックで配給した。

ケニア北部全域で、干ばつは家畜に壊滅的な影響を与えた。エルワクの白茶けた大地にはヤギ・ウシ・ロバ・ラクダの死骸が散乱している。この顧みられない地域の人びとにとっては大打撃であった。この地域においては、動物は主な栄養源であるばかりでなく財産でもあるため、生活に欠かせないものである。

3月に行われたMSFの栄養調査によると、子どもたちの30%が重度の栄養失調に陥っており、さらに多数がその瀬戸際にあった。4月にようやく集中豪雨が始まったが、子どもたちは既に栄養失調で衰弱しており、下痢や呼吸器感染症にかかっていた。栄養状態も悪化していた。5月中は、エルワクで入院率が前月平均の50%増となり、MSFはクワシオルコルにかかっている子どもを目にするようになった。クワシオルコルとは、タンパク質の不足と急性感染症が重なることによって発症する浮腫を伴う重度栄養失調の疾患で、栄養不足が根本的な原因である。

また、5月には、400キロ西にあるマルサビット県の最も乾燥した3地方で2度目の援助を開始した。MSFは簡略化した方法によりチームの機動性を最大限まで引き上げることで、部族紛争や家畜を失ったために避難を余儀なくされた住民や牧畜民の元へ駆けつけ援助を提供した。2つの移動診療チームが、村や周辺の集落35ヵ所で隔週の医療・栄養援助を行った。6月末までには、命を落とす危険のある子ども700人を治療し、重症患者についてはMSFが治療施設を設置した地域病院などに搬送した。

HIV/エイズ治療の改善

この十年間、MSFはケニアにおける活動でHIV/エイズ対策に焦点を当ててきた。ナイロビのスラム地区およびケニア西部のホマベイやブシアで、MSFは検査から治療まで一貫した包括的治療を提供している。2006年3月までに8500人以上の患者が抗レトロウイルス(ARV)薬治療を受け、1万7千人以上を治療プログラムに登録した。

ホマベイとナイロビのスラム地区キベラとマサレでは、MSFはHIV/エイズと結核の二重感染者の治療を中心に行ってきた。これはエイズにより免疫系が弱るために結核を発症しやすくなるからで、このプログラムの目的の一つは二重感染患者の最適な治療法を向上させることである。MSFはHIVと結核の二重感染者の中での結核発見の精度を上げるため、最新技術を用いた診断法を現地に導入している。広大なキベラ地区において、MSFは3ヵ所の診療所を開設している。特に母子保健に重点を置き、うち2ヵ所ではHIV/エイズを含む総合的な基礎医療プログラムを展開している。現在これらの診療所ではHIV陽性の母親から生まれた子どもを早期診断することが可能となったため、感染が判明した生後18ヵ月以下の乳幼児の治療件数が著しく増加している。

現地当局への移管

MSFはナイロビのダゴレッティ地区にあるムバガシ地域病院内にHIV/エイズ診療所を開設し、ケニアの保健当局と提携して包括的なHIV/エイズ治療を提供している。現在MSFはこのプログラムを引き継ぐために保健省を支援している。

治療へのアクセスを改善するという課題は、治療を分散化し、今よりもはるかに多くの場所で治療を受けられるようにする必要性を示している。周辺地域の医療施設を通じてのみならず、新たに検査を受けた患者の経過診療や初めて治療を受ける人びとを支援する役割を担うようになってきた地域社会を通じても治療が受けられるようにする必要がある。

保健省によると、ケニアでは、ARV治療を緊急に必要とする20万人以上のHIV/エイズ患者のうち、実際に治療が行われているのは約7万5千人にすぎない。2006年6月、ケニア政府はすべての公共医療施設でHIV/エイズ治療を無償提供するという、積極的な一歩を踏み出した。これは、ケニアの人口3300万のうち60%以上が1日1米ドル(約120円)以下の収入で生計をたてており、約120万人がHIV陽性であることを考えると、極めて重要な進展である。

MSFは1987年からケニアで活動を行っている。