コロンビア

外国人派遣スタッフ 43人
現地スタッフ 178人
激しい紛争が40年以上に及ぶ現在、コロンビアでは2百万人以上が家を追われている。遠隔地の村では多くの人びとが予防接種をはじめとする基礎医療を受けられない一方で、都会のスラム地区に逃れた人びとは貧困、病気、横行する暴力にさらされている。また国内全域で、暴力事件を目撃し、あるいはその被害者になったことに起因する急性の心的外傷などの精神疾患に苦しむ人も少なくない。しかし、暴力に見舞われる地域の多くが孤立しており、保健スタッフの訪問を受けることはほとんどない。
常設診療所と移動診療によるケアの拡大
MSFは2005、06年も引き続き、常設診療所と移動診療の両方を用いて国内の多くの都市部と農村部で基礎医療を提供してきた。基礎医療のほかに、予防接種、性と生殖に関する医療、歯科治療、心理社会的支援などを行っている。
北東部のノルテ・デ・サンタンデール県では、エル・カタトゥンボ地域内の孤立した農村部でのアウトリーチ活動※を行ってきた。2ヵ所の常設診療所および移動診療活動を通じて、毎月約750人の患者を診察している。
また、コルドバ県、チョコ県、アンティオキア県での活動を拡大し、コルドバ県サイザでは避難先から帰還した人びとのための常設診療所を開設した。さらにチョコ県リオス・スシオには2ヵ所目の診療所を開設している。辺境地に住む人びとには移動診療による医療援助を行い、毎月およそ900人の患者を治療している。
シンセレホのスラム地区では、避難民のための診療所も開設した。ここでは月平均1250人の患者を診療している。多くみられる疾患は、呼吸器感染症、下痢性疾患、急性ウイルス感染症である。MSFはソアチャ地区に新たに避難してきた人びとを支援し、毎月約千人を治療し、心理ケアを行っている。また、避難民の家族に保健医療を受ける権利について説明し、複雑な国営の保健医療制度の利用方法に関する情報も提供している。カケタ県フロレンシアに暮らす人びとには心理社会的ケアも行っている。ここでは毎月約700人が、主にうつ病や心的外傷後ストレス障害のために治療を受けている。移動診療によるケアに加え、ナリーニョ県バルバコアス郡では医療従事者のトレーニング、農村部の医療施設の改修支援、水・衛生環境の改善やゴミ処理システムの導入などを行っている。
トリマ県およびウィラ県北部では、紛争の被害者に対する医療援助と心理ケアを行っている。2005年にMSFはこの地域の20ヵ所以上を訪れ、1万4千件以上の診察と4400件以上のカウンセリングを行った。
トリマ県の中心都市イバゲで実施した調査結果から、避難民は政府機関から援助や医療費補助を受けるまでに平均3ヵ月間待つ必要があることが判明したため、MSFでは2006年1月に、新たに到着した避難民を対象とした医療施設を開設して医療援助や心理ケアを行っている。最初の4ヵ月間の診察件数は千件に上り、そのうちの30%近くをカウンセリングが占めている。
性的暴力の被害者への医療援助
チョコ県ではジャングルにある人口12万人の都市キブドで活動している。キブドと国内の他の地域を結ぶ道路は2本あるが、現在も続いている紛争のためにそのどちらも危険が極めて大きい。
この地域では、特に性的暴力の被害者に対し、性と生殖に関する包括的な医療ケアを提供している。MSFはサンフランシスコ地域病院とイスマエル・ロルダン病院の産科病棟における活動のほか、ギブド市内の5ヵ所の医療施設で、家族計画の方法や緊急時の避妊、医薬品を提供している。また、MSFは移動診療を利用して、キブド近郊の地域において医療援助や心理ケアも行っている。活動開始から3ヵ月の間に、このプログラムでは合計3千件以上の診察、家族計画、心理面での診察を行った。
暴力および自然災害後の援助
2005年11月、サン・フアンシートの町では軍とゲリラとの間の戦闘が激化し、ノルテ・デ・サンタンデール県のこの地域から数百人が避難した。数日後には、同地域で激しい降雨による洪水と地滑りが発生した。現地当局およびコロンビア赤十字との連携のもと、MSFではトラック2台分の緊急医療物資、食糧、避難所、衛生キットを約300人の避難民に配布した。
MSFスタッフの拘束
2006年2月3日、ノルテ・デ・サンタンデール県でMSFのスタッフ5人が現地の武装勢力に拘束された。そのうち3人のコロンビア人スタッフは翌日解放され、2月9日になって残りの外国人派遣スタッフ2人も拘束されていた村から出ることを許された。コロンビアにおけるプログラムでの治安情勢を詳しく分析し考察した上で、MSFではノルテ・デ・サンタンデール県の一地域を除いて、慎重に活動を続ける決定を下した。
MSFは1985年からコロンビアで活動を行っている。
- コロンビアの紛争の犠牲者
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「どの家庭もみな苦しんでいました。私が担任していた11才の生徒たちのクラスで、民兵がこの地にいた間に家族を失った者はいるかと質問したことがあります。28人中20人の生徒が、少なくとも家族の1人を武装勢力に殺されたと答えました。」
地方の学校教師コロンビアは、文化が栄え、国の発展も堅調で活気に満ちている。現代的な都市や繁栄している科学・教育の中心地もある。しかし、この上昇気流のイメージとは裏腹に、内部では激しい暴力を伴う紛争が数十年も続き一向に収まる気配がない。麻薬取引や海外からの軍事援助によって、ゲリラや民兵組織、さらには政府軍も交えた領土や資源の支配権を巡る争いが加速され、一般市民は多大な犠牲を強いられ続けている。コロンビア農村部の紛争地域に暮らす人びとは、局地戦を展開する武装勢力にとって、資源とみなされることも少なくない。
「私たちをどこかに連れて行くと、脅し始め、電動のこぎりがどうのと言い出しました。しばらくしてから逃がされました。私は子どもたちを抱えてすぐさま逃走し別の街へと向かいました。着の身着のままで逃げ出し、一晩中、そして昼間も歩き続けました。子どもたちはずっと食べ物を欲しがっていました、」
地方部から避難してきた母親暴力はコロンビアの死因の第1位になっている。過去10年間の殺人率は住民10万人につき約60人で、これは世界の中でも極めて高い数字の一つである。暴力の結果死亡した人1人に対し、その何倍もの人びとが、さまざまな身体的および精神的な問題を抱えながらも生き延びようとして闘っている。
「その男性は町中をさまよっているところを発見されました。気分が悪いと言っていましたが、どうしたのかは説明できないようでした。話しながら泣き続け・・・涙が頬を流れ落ち、私たちが泣いている理由を尋ねると「僕、泣いていますか?」と言いました。涙を拭うと、また泣き始め、気分がすぐれないと繰り返していました。彼は一時的な記憶喪失により、状況がわからなくなって混乱し、何が起こったか思い出せなくなっているのです。」
地方部の地域の指導者「母は眠ることができません・・・通りでオートバイの音がすると目が覚めて眠れなくなります・・・というのも、先週義弟を迎えに行かざるをえなかったのです。義弟だとはわからないほどでした。めった打ちにされ、頭が切り落とされていました。僕の頭からは義弟のその姿が離れません。」
都会のスラム地区に住む青年紛争の犠牲者に対する関心を高めるためにMSFが編纂した64ページの報告書「恐怖の中に生きる:コロンビアにおける暴力の悪循環」より。本報告書では、紛争の結果もたらされる過酷な事態に耐え忍ぶ人びとの声を伝えている。














