ワクチン

国境なき医師団(MSF)は、基礎医療プログラムの一環として、予防接種の普及率が低い国の5歳未満を対象に、定期的な予防接種を実施しています。DTP(ジフテリア・百日せき・破傷風の3種混合)、B型肝炎、ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(ヒブ)、BCG(結核ワクチン)、子宮頚がん、はしか、ポリオ、ロタウイルスなど世界保健機関(WHO)が推奨しているワクチンの接種が行われています。

はしか、黄熱病髄膜炎の対策では、予防接種が重要な役割を担っています。MSFの活動チームは、大規模な集団予防接種に携わっています。スタッフが予防接種の有益性について地域住民に説明し、意識を高めます。その上で、地元の人びとの意識を高めるよう働きかけ、人びとが集まる場所に予防接種を行う施設を設置しています。こうした予防接種キャンペーンは通常2〜3週間行われ、数万人に実施することもあります。

低い予防接種がはしかの流行の原因に

安全で費用対効果の高いはしかのワクチンの存在や、大規模な集団予防接種によってはしかの罹患者数と死亡数は劇的に減少しました。しかし、保健医療体制が弱い国や、医療を受ける機会が限られている人びとの間では、接種率はいまなお低く、大流行の原因となっています。

「髄膜炎ベルト」地域で新しい髄膜炎ワクチンが希望に

MSFは、マリニジェールで新しい髄膜炎ワクチンを導入するキャンペーンに参加しています。このキャンペーンは、アフリカのエチオピアからセネガルへかけ東西に帯状に広がる「髄膜炎ベルト」と呼ばれる地域で流行する髄膜炎菌への防御策です。新しいワクチンの有効期間は10年間で、発症していない保菌者からの感染も防ぐことができます。長期的な予防が可能な新ワクチンは、髄膜炎ベルトに暮らす数百万人の生活を変えうる手段となっています。

ワクチン普及の課題

ワクチンの価格

ワクチンの価格の報告書を見る(英文)

途上国の人びとでも購入しやすい価格でワクチンを供給することは、より多くの命を守ることにつながります。一般的に、ジフテリアやはしかなど古くからあるワクチンは高額ではありません。しかし、市場に新しく登場したワクチンは非常に高額です。特に問題となっているのは、価格競争が起きるほど多くのワクチン販売業者が、市場にいないことです。最貧の途上国はワクチン代の支払いのために「ワクチン予防接種世界同盟(GAVIアライアンス)」を通じて資金援助を受けています。こうした国は、支援対象から外れると自国でワクチン代を賄う必要性が高まります。長期にわたって持続可能な広範囲の予防接種を維持するためには、ワクチンの価格低下が非常に重要です。

予防接種の戦略

近年のはしかの大規模な集団感染への対応を通じ、多くの途上国で子どもの病気に対する定期的な予防接種プログラムが十分に機能していない実態が、MSFの調査で明らかとなりました。理由の1つは、紛争や政情不安です。また、1歳未満の予防接種率が低い理由としては、融通のきかない戦略やスケジュール、脆弱な運搬システムなどがあげられます。さらに、年長の子どもたちの多くは、未接種のワクチンの追加投与計画が限定的だったり、計画そのものがなかったりして、予防接種をまったく受けられない状態です。年長の子どもを対象とした追加的な予防接種を実施し、定期的な予防接種プログラムに新しいワクチンを導入していくためには、より効果的な予防接種の戦略が必要です。

ワクチンの研究開発

必要なワクチンを確実に接種できる体制を途上国に確立するためには、2つの大きな課題に取り組むことが必要です。1つは、活発な市場競争がないために新しいワクチンに法外な高値が設定されていることです。もう1つは、途上国での使用に適したワクチンの研究開発が進められていないことがあげられます。

これは、製薬会社が研究開発を行う際、購買力の弱い人びとが苦しんでいる病気の薬を作っても利益が乏しいと判断され、十分な動機づけとならないためです。現在、途上国での使用に適した安価なワクチンを作りだすため、研究開発に資金を援助する「プッシュ」型や、開発された新薬の需要を保証する「プル」型で製薬会社に動機づけするなどさまざまな方法が議論されていますが、よい結果ばかりとは言えません。

関連資料