結核

国境なき医師団(MSF)は29ヵ国で結核患者を治療しており、その活動地は都市部のスラム街、医療の整備が遅れている農村地域、刑務所、難民キャンプなど多岐にわたっています。

活動の多くは地元の保健医療当局と協力して行っています。MSFが治療した患者数は、2010年は3万人近くに達しました。そのうち3300人が15歳未満の子どもでした。

また、近年は、治療薬に耐性を持つ「薬剤耐性結核菌」の感染拡大が国際的な問題になっています。MSFが治療した薬剤耐性結核の患者数は、2001年は11人でしたが2010年には15ヵ国で約1000人に増えています。

「結核(TB)に感染すると……?」

結核ってどんな病気?
多剤耐性結核ってなんだろう?
患者の声を交えてわかりやすく図解します。

課題と提言

治るはずの病気で命を落とす

結核の新規感染者は年間940万人、亡くなる人は170万人で、途上国の主要な死因です。症例数の85%はアジアとアフリカに集中しているほか、東欧も主要な感染地域です。近年では、結核とHIVに二重感染している人びとの間で、結核菌が再活性化する症例が劇的に増えています。さらに、薬剤耐性を持つ結核菌(DR-TB)も増えています。結核の診断・治療は非常に難しく、新しい医療ツール研究・開発も決定的に不足しています。こうした事実が感染の拡大を抑える上で大きな障害となっています。

140年前の診断方法に頼っている現実

TB&ME:結核(TB)の歴史

途上国では主に、患者の痰を顕微鏡で検査する方法で活動性結核を診断しています。これは140年近くも前に開発された方法です。検出できるのは活動性結核の全症例の半分にも達しません。子どもの患者、HIVとの二重感染の患者、薬剤耐性結核の患者の大部分は検出できないのです。

別の診断方法もありますが、検査室・安定した電力供給・技術を持ったスタッフが必要で、都市部以外では条件をそろえることが難しい状況です。最新の診断ツールは正確で迅速な結果を出すことができますが、価格が高く、利用しやすいとは言い難いものです。すぐに診断結果がわかり、価格が安いツールの開発を加速することが必要です。

大量の薬を服用するつらい治療

結核は治る病気です。しかし、治療は最短でも6ヵ月かかります。さまざまな抗生物質を併用する方法で、数十年間も本質的な変化がなく、改善がまったく進められていません。DR-TBの治療では、患者は1日最大20錠もの薬を服用するつらさに耐えなければなりません。治療の初期段階では、痛みを伴う注射を毎日受ける必要もあります。激しい副作用も現れます。一部の薬は非常に高額です。供給上の問題から薬が不足する危険を招く可能性もあります。

結核とHIVの二重感染問題

HIV/エイズとともに生きる人びとにとって、最も大きな死因となっているのが結核です。患者は免疫システムが弱まっており、結核を発症しやすいためです。HIV患者の結核診断は難しく、効果的な診断ツールもないことから、多くの患者が診断されないままとなっています。DR-TBの場合はさらに、診断も治療も困難です。DR-TBを治療する薬には激しい副作用があり、専門家の指導・監督がなければ服用を続けるのが難しいほどです。また、結核の治療薬の中にはHIVの治療薬と相互に影響しあうものがあるため、同時に服用ができません。HIVと結核の二重感染の患者の負荷を減らすためには、2つの治療を統合し、患者が治療を続けられるようにすることが重要です。

置き去りにされた子どもの結核

結核は子どもの死因の10位以内に入っており、世界中で年間推定13万人が亡くなっています。結核は“貧困層の病気”と呼ばれており、子どもの患者の圧倒的多数は所得の低い国々に暮らしています。

子どもの結核診断と治療は難しく、新しい診断テストや治療薬の研究はまったく見過ごされています。途上国で広く使われている診断ツールのほとんどは、子どもたちの診断には使えません。また、治療薬は子どもに使う際の安全性や有効性を確認する治験が行われていません。DR-TBの既存薬には“子ども用”がないのです。

新しい診断ツールの不足

結核の新薬や診断ツールの開発は数十年間も見過ごされてきましたが、近年、開発に向けた活動が前進を見せています。数種類の新薬が、数年以内に医薬品の開発・供給ラインに登場すると期待されています。しかし、結核菌の劇的な再活性化が見られる現在、その対策に取り組むには十分ではありません。

結核の新しい分子診断ツールが販売され、HIVとの二重感染をしている患者を診断しやすくなってきています。とは言え、限られた条件下でも即座に結果を出すことができ、正確で安価な診断ツールはいまもまだ不足しています。