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医学雑誌「ランセット」が発表した母子の栄養失調に関する論文は、的外れな見解を示している

情報発信日 2008年01月18日

英国の医学雑誌「ランセット」(The Lancet)の最新号で発表された母子の栄養失調に関する一連の論文では、栄養の問題が「母親、新生児、子どもの健康面においてなおざりにされてきた」として正しく位置付けられている。しかしながら、これらの論文における分析の弱さと時代遅れの推奨案は、緊急に必要とされている対応策の推進を阻むものである。

国境なき医師団(MSF)は、2006年には99のプログラムにおいて合計15万人以上の栄養失調児を治療しており、栄養失調が子どもにもたらす壊滅的な影響に日々直面している。MSFの医療スタッフは、栄養失調が子どもの抵抗力を弱め、肺炎、下痢、マラリア、はしかやHIV/エイズなどに感染して命を落とす危険性を高める状況を目の当たりにしている。また、スタッフは栄養失調児の治療において、栄養価が高くそのまま食べられる栄養治療食(RUF)の絶大な効果を実証してきた。

以下に、ランセット誌の一連の論文における問題点のうち数例を挙げる。

  • 記事で言及されている重度の急性栄養失調による死者数は、アフリカ中部や南部で広く見られる、死に至る危険性が極めて高い栄養性の浮腫などによる数が含まれておらず、死者数を大幅に低く見積っている。
  • 世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、世界食糧計画(WFP)が支持する、重度の栄養失調児を在宅、あるいは居住地域内でRUFを用いて治療するという新たな取り組みを積極的に推奨していない。
  • 各国の保健省、国連機関やNGOが現在、在宅・居住地域内でRUFを用いて治療するという効果の実証された手法に移行している中で、病院での治療の有効性に焦点を当てている。現在病院で治療を受けているのは、合併症を発症した患者のみである。
  • 著者らは、居住地域内での治療についての無作為化臨床試験が行われていないということを理由に、この治療法への強い支持を控える姿勢を正当化している。ところが、9つの調査結果に基づいて病院での治療の有効性を主張しているが、そのいずれも無作為化された調査ではない。

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そのまま食べられる栄養治療食(RUF)を
食べる子ども。ニジェール、マラディ県にて
MSFは2000年以来、アフガニスタン、アンゴラ、ブルンジ、エチオピア、ニジェール、スーダンなどのアフリカ・アジア諸国で、RUFを用いた急性栄養失調の治療を行ってきた。外来治療と在宅治療により、病院での治療が標準的だった以前と比べてはるかに多くの子どもの治療が可能になった。

ニジェールのマラディ県におけるMSFのプログラムでは、2001年以来数十万人の患者の治療を行い、その成果を厳密に観察してきた。2007年には2万2千人を超える重度の栄養失調児の治療を行い、治癒率は84%、死亡率は3%未満であった。

現在、マラウイ、エチオピア、ニジェールでは、各国の保健省がさまざまな実施機関の支援のもと、重度の栄養失調の大規模な外来治療を行い、成功を収めている。しかし、国連がRUFを用いた治療を実施するよう強く推奨しているにもかかわらず、重度の急性栄養失調に陥った世界中の子どものうち、この治療を受けられるのは約3%に過ぎない*

この論文の著者らは、栄養失調をRUFを用いて居住地域内で治療する方法を強く支援し、その推進に寄与する代わりに、命を救うこの治療法への支持を弱体化させようとしている。

ランセット誌におけるこれらの保守的な見解は、おそらく、より新しく効果的なRUFを用いた治療はさらに高額な費用がかかり、輸入あるいは現地で購入するために国際的な資金援助が必要になるという事実に基づいたものであろう。しかし、MSFや他団体が実証しているRUFを用いた治療の優れた成果からすれば、資金拠出機関はこの効果的な治療法の実施を早急に拡大するために資金援助を行い、支援を行うべきである。この戦略を実施するかしないかは、栄養失調に陥る危険性がある3才未満の子どもの生死を左右する。


*重度の急性栄養失調の症例全てを治療するのに必要なRUFの量(子ども1人あたり平均12.9kgで計算すると、2千万人で25万8千トン)と、2007年の推定消費量の総計8500トンに基づいたMSFの推定。

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